大学生は、「暗記」をする機会があまりないのかもしれません。大学教育では、暗記をする機会はあまりありませんね。
しかし、これから就活を控える学生にとって、暗記はまだまだ「有用」つまり、まだまだ使う機会があるものです。記憶から必要なものを取り出して、自分の言葉で表すことは、社会に出る前から必要なことだからです。
「就活を始める」という段階でこれら「必要なものを取り出して話す」スキルを身に着けるのでは遅く、学生生活のなるべく早い段階から、記憶をもとにして、状況に応じて適当な表現をするスキルを獲得しているべきなのです。
そこで今回は、「自分の言葉で話すため」の前提条件である「記憶術」について解説していきます。
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就活準備のための「記憶術」とは?
ではそもそも、なぜ就活準備のために記憶術が前提条件となるのか、その理由を説明します。
厚生労働省が公開している資料「新規学卒採用において企業が求める人材」(2013年1月1日)を見てみましょう。
ここでは、「企業の採用で重視される能力」がランキングで示されています。2012年の情報を見てみると、1位は「熱意・意欲」 2位「行動力・実行力」 3位は「チームワーク力」となっていることが分かります。
参考資料:「第一節 新規学卒採用において企業が求める人材」-厚生労働省
1位から3位は、総じて「採用面接」で評価、判断されることになります。また、それ以前に提出するエントリーシートの内容も同様です。自分の人間性や、考えていることを文面もしくは口頭で表現しなければなりません。
そこで重要なのは、「自分の経験や学業から学んだこと」を的確に覚えている、長期的なスパンで見た「記憶力」になります。たとえば、ボランティアや課外活動に熱心に取り組んだ学生も、長期インターンで活躍した経験を持つ学生も、部活でスポーツを一生懸命していた学生も、「その経験から何を学んだか?」を表現するためには、「経験自体を覚えている」必要があります。
ですから、そういった「経験」「学び」を記憶しておけるすべを、学生のできるだけ早い段階で身に着けておく必要があるのです。
「経験」「学び」を覚えるための「記憶術」
では、上記の項目を踏まえて、「経験や学びを記憶する」ための方法を紹介していきます。
(1)「エビングハウスの忘却曲線」を参考に復習する
ドイツの心理学者、エビングハウスは「無意味な文字の羅列を記憶してそれを一定時間後にどのくらい思い出せるか」という興味深い実験を行いました。
その際、記憶の保持率は20分後に58%、1時間後に44%、そして1日後には26%、31日後には21%まで低下することが判明しています。
「学生のころは色々な経験をしておけ!」とはよく言われることですが、そもそもたくさんの経験をして古い記憶から忘れてしまえば、あまり意味がなくなってしまいますよね。
まずは、「人の記憶は薄れやすいものだ」ということを念頭に入れておきましょう。それは経験から得た学びであれ、歴史の年号であれ、そのままだと忘れてしまう「短期記憶」なのです。
下記で紹介する方法と組み合わせて、記憶の保持率が下がる時期に経験を復習することを心がけましょう。
(2)「手続き的記憶」にする
記憶は、「手続き的記憶」と「宣言的記憶」に大別することができます。「手続き的記憶」とは、体に染みついた習慣のようなもので、「体で覚える」ことはこれに分類されます。
対して、「宣言的記憶」とは言葉で話して説明する記憶です。どちらが記憶に残るかと言われると、断然、「手続き的記憶」になります。
「経験を手続き的記憶にするのは難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。就職活動では、これまでの経験で培ってきたことをもとにエントリーシートに書きますが、そのように「経験やそこから学んだことを言葉にする(言語化する)」ことで、宣言的記憶を繰り返し、「手続き的記憶」にレベルアップさせることができます。
(3)エピソード記憶
(2)の言葉にする、ことと似ていますが、自分の経験を「エピソード」にして記憶することも重要です。特に、就職活動では、学生生活で何をしていたかを簡潔に話す必要がありますし、これまでの学びと、これからの将来の展望を言葉で表現する必要があります。
そこでは、何よりも「簡潔なストーリーで話す」ための準備が欠かせません。まずは、これまで自分が経験してきたことを「エピソード」にしてみましょう。その経験はどんなもので、その経験で自分はどんな学びを得たのかを、「ストーリー仕立て」で表現していきます。
これら(1)~(3)を、自分の経験を素材として作っていきます。そして、この経験は学びを多く得ることができた、という経験を「記憶する」作業が重要です。
「自分」を簡潔に伝える記憶術
就職活動の際は、自己分析、業界研究をもとに進めていく期間です。採用や就活の仕組みは近年その仕組みの変化が著しいですが、「自分」と「企業」のマッチングを成功させるという根本は、今後も変わることはありません。
どんな仕組みを活用して就職をするのであれ、「自分を伝える」ことが重要であることは確かです。そしてそのためには、経験やそこから得た学びを「記憶」しておきいつでも話せるスキルを身に着けておく必要があります。