「表現力」とは、決して「芸術的な能力」や想像力だけに限るものではありません。ビジネスシーンにおいても、日常生活においても「表現力」は必要です。
「表現力」を鍛え、それを実際に活かすことは、私たちが相手に何かを的確に伝えるための必須条件になります。なぜなら、私たちは社会生活を送るうえで必ず「誰かに」「何かを」伝えなければならないからです。
シゴトで成果を出すうえで「表現力が高い人」が活躍するのは、「誰かに何かを伝えること」に長けていることが理由の一つといえるでしょう。
そこで今回は、「表現力」の意味と、その表現力を鍛えるための方法についてご紹介していきます。
Contens
「表現力」とは何か?
表現力の辞書的な意味合いは…
感情や思考などを伝達可能な形式に表す能力。特に、より効果的・印象的なものとしてそれを伝える能力。(引用:weblio辞書-表現力)
となっています。ここでは、自分の「思い」や「考え」を、伝えたい相手に分かりやすく伝えることが表現力と定義されています。
また、文部科学省の言語活動の充実に関する指導事例集【小学校版】には、小学生に対する現行学習指導要領・生きる力として以下の考え方が示されています。
学校教育法第30条
(中略)
ここには、学力の重要な3つの要素が示されている。
(1)基礎的・基本的な知識・技能
(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等
(3)主体的に学習し取り組む態度(後略)
小学校から身に着けるべき「学力の要素」の一つとしても「表現力」は重要であるとされていることが分かります。
このように、表現力とは、「学ぶこと」「伝えること」という、社会人一般が身に着けておくべきスキルの根本となるものなのです。
ここで、社会人一般のスキルの根本という意味で、表現力とは、「知識や情報を伝えるべき相手・状況に対して適切な情報伝達を可能にするための能力である」と考えることができます。
では、「伝えるべき相手・状況」に対して適切な表現をするためには、どのように表現力を鍛えていけばよいのでしょうか?
「表現力」を鍛える5つの方法!
ビジネスにおいても、社会生活一般においても「学ぶ」「伝える」というものは根本的なスキルになります。よって、常日頃から「鍛えておく」ことで、成果や目標達成の道のりもより明晰(めいせき)になるでしょう。
(1)多くの語彙(ボキャブラリー)を身に着ける
多くの語彙を持つために最も効率的なのが「読書」です。本を読むことで語彙を多く知っておくことには、「難解な文章や言論を理解する」ということ以外にも様々なメリットがあるといってよいでしょう。そのメリットとは、「自分の表現したいことがらを、明確に表現できるようになる」というものです。
語彙力を向上させる読書には、2つの切り口があります。
1.「あなたが客観的な論理や情報を表現したいとき」
専門書、新書、あるいは教養のための書籍や官公庁の一次情報、その他、シゴトで触れる機会のある公的な文書から「どんなことが言えるか?」「問題は何か?」と考える。
2.「あなたが主観的な感想や感情表現を豊かにしたいとき」
「小説」「詩(歌詞も可)」、また、「エッセイ」やコラムなどといった「主観的表現」が多く入っているものを読む。
語彙力といっても、様々な様態があります。自分がどんな表現力を鍛えたいのかによっても、読書の方法は変わっていきます。
(2)「自分の意見」を多く持つ
語彙力を増やしただけでは、表現力を鍛えたことにはなりません。あくまでも表現するための材料がそろっただけであって、まだ表現力を向上させる手立てを打っていることにはなっていないからです。
するべきことは「自分の意見を多く持つ」ことです。覚えた語彙を駆使して、自分の意見を作ってみましょう。(1)で読んだ内容の本や、会話、あるいは会議や打ち合わせなど「文章」に触れる機会はたくさんあります。
自分の意見を持つためには…
1.(読んだ、聞いた)文章から着想を得た論点に関して、「自分はこう思う」「自分はこう考える」という風に、”文章化”すること。
2.TVニュースやWeb記事を読み、時事問題を追いかけるだけではなく、きちんと「自分の意見」を構築すること。
(3)思ったことをしっかり口にする
たとえ多くの「自分の意見」を持っていたとしても、それを誰かに「表現」できなければ、「宝の持ち腐れ」になってしまいます。
表現を豊富に含んだ意見や考えも、それが「表出」しなければ意味をなさないからです。さきほどの文部科学省の資料にも、小学校の時点から「表現力を鍛える」ことの重要性が表れています。そのくらい早い時期から、「意見を外に出す」ということが重要であるということを表しているといえます。
ですから、まずは「思ったことをしっかり口にする習慣」をつけなければなりません。思ったことを口にする習慣を持つためには、「人と話す機会」を作る必要があります。
「人と話す機会を作る」には…
1.家族・友達と改めてテーマを設けて話をすること。
2.テーマがあらかじめ決まっているセミナーや講演会、ワークショップに出席すること。
2に関しては、住んでいる地域によってそのような機会に恵まれない方も多いでしょう。しかし、1に関しては、自分の働きかけ次第で実行することができます。
あらかじめ話すテーマを決めて、改めて席を設け、自分から「○○について話をしたい」と持ち掛けてみましょう。自分が思っている以上に、人は「まじめな話」をすることを潜在的に望んでいる場合がとても多いです。ぜひ実践してみましょう。
(4)日記やブログで文章を書く
人と話すことで表現力を鍛えることができますが、方法はそれだけではありません。
自分の内面の考えや意見というものは、「人に言えないこと」「言いにくいこと」である場合もあります。また、「話すまでもないこと」というのもありますよね。
そんなときは、「文章にして表現する機会」を設けてみるのも一つの手です。
文章にして表現するには、以下の2つの方法があります。
1.日記
主観的な考えや思いを様々な表現でつづることができる。
2.ブログ
時事問題に関する意見を書き、それがもととなって新しい意見や考えに出会うことができる。
最近(2016年6月現在)は、政治的問題でブログの書き込みが問題化していたり、SNSによる悪質な書き込みが話題になったりと、自分の意見や考えを表明したりすることに「悪いイメージ」を抱ぎがちです。
また、日記に関しても「それ、意味あるのか?」という意見や、「そんな時間はない!」という意見があります。
しかし、そのような悪いイメージや「意味性」を考えてもなお、表現力を鍛えるために「日記」「文章を書く」という行為には大きなメリットがあるといえるでしょう。
(5)VAKトレーニングの実践
「VAKトレーニング」とは、表現力や会話力を向上させるためのトレーニングとして知られています。
VAKとは?
「Visual」…視覚
「Auditory」…聴覚
「Kinesthetic」…身体感覚
VAKトレーニングとは、この3つの感覚からものごとを「表現」する方法です。
「友人がこの間海外に遊びに行ってきた」という事実を、この3つではそれぞれ以下のように表現します。
「Visual」
「この間、友人から海外旅行の写真を見せてもらったんだけど、ドイツっていい国だなと思ったね、私も行こうかな!」
→頭の中にイメージして表現する
「Auditory」
「この間、友人が『ドイツ満喫してきた~!!!!ケルン大聖堂に圧倒された!』って話していて、私も行きたいなぁ~と思った!」
→会話や音、声から表現する
「Kinesthetic」
「この間、友人がドイツでビール飲んだ話をしていたんだけど、ビールを飲むのを想像するだけでもう行きたくなったね~」
→「体の感覚」から表現する
このように、同じような会話でも、どんな「感覚」に主軸を置くかによって、表現の仕方も変わってきます。
同じ物事に関して、この3つの側面から表現してみることを実践すれば、「今の状況」でどんな表現が適切かを判断することができるでしょう。
また、自分が3つのうち、「どのような感覚を主軸として表現することが得意か?」を明確にしておくことも、表現力を鍛えるうえで重要です。