ゆるキャラ桃色ウサヒの中の人、佐藤恒平氏が語る「本当のまちおこし」とは?

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今回は、地域振興サポート会社「まよひが企画」代表、ウサヒの”中の人”、佐藤恒平さんのIKIKATA。

山形県朝日町のPRキャラクター「桃色ウサヒ」をはじめとした画期的な地域振興メソッドを実践し、地域おこしの実行と研究を推し進めている佐藤さん。

地域おこしとは何か? その本質に迫る生き方から、キャリアの考え方を学ぶことができます。地域おこしやまちづくりに取り組む方々必見のインタビューとなりました。

 

具体的な業務

地域振興サポート会社「まよひが企画」では、妻とスタッフが2人の計4名。そのほかアルバイトが入ったりもして、4〜5人体制で仕事をしています。

事業内容は「地域振興のサポート」。地域振興を行いたい自治体や団体、企業から依頼をいただき、企画とデザインの両面からカタチになるまでお手伝いしています。まちおこしの下請け会社って感じですね。

「地域振興をやりたい動機」はあるけれど、技術や時間や人手が足りていない団体さんをサポートするというお仕事になります。

クライアントさんが持っている「まちおこしのアイディア」を形にしていくことに、仕事の重点を置いているので、現時点で地域おこしを頑張っているけど何故かうまくいかない。周囲の地域と差別化した地域おこしで成果を出したい。そんな自治体さんや公益団体さんには、僕らのサービスが合っているかなと思います。

 

—「地域おこしにやる気があるかどうか?」はどのような部分で分かるのでしょうか?

「まよひが企画」は山形の電車も通っていない町にある小さな会社です。相当しっかりと探してこないと僕らの会社には辿り着けません。都市部にある大きなコンサル会社ではなく、こんな小さな会社に「何か方法ないですか?」と問いかけてくる段階で他にはない動機は伝わってきます。

—そこでふるいにかけられてくると(笑)

※社名である「まよひが(マヨイガ)」とは、遠野物語に出てくる、見つけると幸せになれる家のこと。しかし、山奥にあって、道に迷わないと辿り着けないとされている。

そうかもしれませんね。地方創生が叫ばれるこの時代、多くの会社がこういった事業に乗り出しています。僕のような30代前半の人間なんて地域振興の指南役としては若造ですし、会社ももの凄く小さい。

それでもウチの社風や独自性を気に入って頼んでくれる人がいるのは、本当に嬉しいです。例えば沖縄の広告代理店さんが僕らをわざわざ探してくれて、ゆるキャラを作る仕事の依頼をくれたときはびっくりしましたね。

 

—現在取り組まれているプロジェクトを教えてください。

山形県朝日町では、「まちづくり総合アドバイザー」として、町内の地域振興に関する包括的なサポートをしています。

メイン業務は3つで「桃色ウサヒ」という町のPRキャラクターの企画と運営。朝日町の「ふるさと納税」PRと移住交流の推進。移住者の受入れ体制づくりやPR、交流を作る事業をやっています。

 

移住推進の仕事に関しては、朝日町の空き家を利用したゲストハウスづくりを請け負っていて、2016年の冬からは、「まよひが企画」がプロデュースしたゲストハウス「松本亭一農舎」がオープンしました。

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また、近隣の上山市や寒河江市の地域おこし協力隊の人員を募集する求人HPや、求人内容の作成もお手伝いしています。

「どういう風に見せて行きたいですか?」といった、募集サイトのデザインに関するヒアリングをしていくのですが、結果的には「どんな地域おこしの方針で運営するのか?」といった、コンサル本来の役割を担いながら、地域おこしを請け負う人材の募集を作り上げています。

 

—見せ方から内容まで包括的にサポートしていくということですね。

募集サイトのデザインは弊社に完全にお任せで構わないんですが、募集の内容、つまり、地域おこしの方針は「やる人たち」が考えるべきです。クライアント自身が考えることで、実際に求人で人が来てくれたときに、心から「お待ちしてました」と言えます。「求人内容は業者が勝手に書いたことだから…」ということになると、ミスマッチが起こりますから。

 

—クライアントも主体的に関わって、持続できる体制を作り上げるってことですね。

「クライアントが主体的に」という点はまさにその通りです。僕みたいな業者は地域を元気にするための道具ですから、「使う人=クライアント」の積極的な意志こそが最も大切です。

でも「持続可能」という言葉はそんなに意識はしていません。どちらかというと短期でやりきれる企画を提案しています。もちろん必要な期間は継続してもらわないと困りますけれど。

 

—持続可能は必ずしも求めないと? 

はい。町おこしなんて、本来はすぐ辞めてよくて。「次、何しよう?」と考えるほうが楽しくないですか? 「持続可能性」はあってもいいけれど、先々の継続を考えすぎてやる気が削がれるくらいなら、必ずしも前提条件として議論しなくてもいい。

 

—個人的には事業を始めるにあたって、「数年後の収益をどうするのか?」という話がやたらと議論されるのに違和感を感じるのですが、考えたくなかったら、考えなくてもいいのでしょうか?

僕はそれで良いと思っていますよ。自分がこれまで見てきた感覚だと、本当にうまくいっている人たちって、いうほど継続のためのマネタイズなんか考えていない。想いを実行できる人って、もっと別なことに多くの時間を使っているのではないかと。

 

—では、何を考えていると思いますか? 

「ビジョン」じゃないでしょうか? 見えている「未来の幸福な風景」があって、それをより鮮明に思い描く時間に多くを費やしていると思います。この人を巻き込んだら楽しいとか、こんな感じに見せたいとか、うまくいったらこんなセリフを口にしたいとか・・・鮮明な妄想づくりですね。

 

—佐藤さんはそのビジョンをクライアントさんと共有しながら仕事をしていますか? 

会社のスタッフと共有することは大事にしています。でっかい未来の社会の夢を語っています。一方でクライアントさんに対しては、大きすぎる夢は語らないですね。むしろ、短いスパンで達成したい結果を共有して、到達した喜びを一緒に味わえるようにしています。

 

—短期的とはいいますが、例えばクライアントの1つである朝日町役場さんからの、ご当地キャラクター「桃色ウサヒ」の運営は6年以上されていますよね? 

それなんですが、実は「桃色ウサヒ」のプロジェクト自体は、2013年度で終了ということになっているんです。現在のウサヒは役場のHP更新やSNSの発信、イベントでのPRといった情報発信の仕事のみを行っています。

—それは、ウサヒの仕事と言えるのではないでしょうか? 何が終了したんでしょう?

「桃色ウサヒ」は、僕が大学院の時に考えた実験企画で、個性のないウサギの着ぐるみを、町のPRキャラクターに育てるために、住民のアイディアを取り入れながら育成して行くプロジェクトなんです。

あえて無個性な外見にする事で、地域住民にいろんな改善案を出してもらって、それを形にして行くことによって、住民参加型の地域情報を発信する。そうやって、地域おこしに関わるハードルを下げていこうって言う取り組みだったんですが、とりあえずそのプロジェクトは2013年度で終了しているんです。

今やってるウサヒは、そういった実験ではなく、イベント出演とWEBサイトでの情報発信だけですから。

 

—なるほど、ウサヒを通して住民を地域振興に巻き込むというプロジェクトとしての本質は完結している、ということですね。 

そうです。ウサヒのグッズなんて、地域の方が自由に開発してくれていて、僕らが依頼しているわけではありません。ウサヒの本質は町の人たちが理解してくれていて、継続してうまく活かしてくれています。

 

—「ウサヒ」にある程度手が離れたからこそ、次なる企画として、ふるさと納税やゲストハウスづくりなんかを手がけられているのですね。 

そうです。地域振興に関することを企画とデザインの両面からお手伝いするのが「まよひが企画」ですから。着ぐるみはその1つの手法ってだけです。

 

今の仕事に就いた経緯・キッカケ

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「意欲を出すデザイン」を研究した大学時代

東北芸術工科大学情報デザイン学科にあった「未来デザイン」(現在は企画構想学科)というコースに入りました。大学入学当初から「地域おこし」をやりたかったんです。一般的な美大の「作品を作る」ではなく、「デザインによる地域振興の研究」が入学の動機でした。研究のテーマは「地域振興に活かすデザイン」です。

 

—それは「地域おこしをデザインでカッコ良く見せる」ということですか。例えばパッケージやパンフレットを作るような? 

いえ、僕がやりたかったのは、地域振興がしたくなるデザイン、「意欲が出るデザイン」を生み出すことです。持っているだけで土を掘りたくなるスコップとか、絵を描きたくなるペンとかを作る感じで。

 

—「呪われた道具」を作りたいみたいな発想ですね(笑) 

町おこしとか、地域づくりとかって、なんかめんどくさそうじゃないですか。だから、できれば目を背けたいし、可能なら誰かがやってくれればラッキーって意識は、多くの人が持っています。そんな気持ちを変えるためには、「呪われた道具」のようなモノを作らないと、解決できないかなと思いまして。

 

—なるほど、ウサヒがそれなんですね。 

そう言うことです。あいつを見ていて、何となく「町おこしを手伝ってあげなきゃな」という気分になって貰えたら嬉しいです。

町おこしをすることによる「面倒くさそう」「意識高い系と陰口たたかれそう」と思ってしまう「心のハードル」を、ウサヒによって少しでも低くすることが目的の実験企画なわけです。

 

「地域おこし」の実践

—ウサヒのような活動を学生時代からずっとされていたのですか?

もう少し真面目な事をしていましたね。大学時代から地域活性化のための活動に参加していて、山形市七日町の活性化イベントや、山形市役所インターンとして「山形国際映画祭」の運営スタッフをしていました。(※当時、山形国際ドキュメンタリー映画祭は市の運営事業)

また、地方の課題を学生で解決するチャレンジコミュニティ創生プロジェクト(経済産業省・NPO法人「ETIC.」)に参加して、福島県会津美里町で伝統工芸による地域おこしなどを行っていました。

使わなくなった店舗を改装して、住み込みで店長をやっていました。お客様が会話をしたくなるデザインを「研究」と称してね。今でいうリノベーションの活動です。

 

大学院へ進学し研究を見直す

そんな地域おこしの活動を大学4年間やっていたけれど、決して上手くいったわけではなかったんです。頑張れば頑張るほど何処か周りの人から離れて行くような、孤独になっていく感覚がありました。

そこで、「やり方を変えなきゃ」と思ったんです。「これが地域のためだ!」と自分が思っていた方法を洗い直して、周りが参加したくなるようにするにはどうすればいいのか、(地域おこしに)興味のない人も気になる存在になるにはどうすればいいのか、とにかく「今までの自分はどこかが間違っていたんじゃないか?」と考えていきました。

そこで思いついた手法が「非主流地域振興」という考え方です。

その考え方のもと、大学院で研究をしながら「桃色ウサヒ」というプロジェクトを実行しました。その後1年間ほど関東でサラリーマンとして働き、朝日町に移住。独立起業しています。

佐藤 恒平(さとう こうへい)1984年生まれ。福島県出身。東北芸術工科大学文化財情報科学領域修了。関東で住宅リフォーム会社の営業職を経て、2010年に地域おこし協力隊として山形県朝日町情報交流アドバイザーに就任。学生時代から行っていた地域振興研究のひとつである「着ぐるみを使った、地域おこしがしやすい地域づくり」の実践として、自作の着ぐるみ「桃色ウサヒ」による朝日町のPRを皮切りに、全国的に実験的手法による地域振興プロジェクトを手掛ける。2014年1月、地域振興サポート会社「まよひが企画(マヨイガキカク)」を開業。自身が提唱する成功事例の再現を模倣しない活性化手法「非主流地域振興」によって、自治体や公益団体の事業サポートを行っている。また、地域サポート人ネットワーク認定アドバイザーとして、全国の地域おこし協力隊(総務省事業)の支援活動も手掛ける。

佐藤 恒平(さとう こうへい)1984年生まれ。福島県出身。東北芸術工科大学文化財情報科学領域修了。関東で住宅リフォーム会社の営業職を経て、2010年に地域おこし協力隊として山形県朝日町情報交流アドバイザーに就任。学生時代から行っていた地域振興研究のひとつである「着ぐるみを使った、地域おこしがしやすい地域づくり」の実践として、自作の着ぐるみ「桃色ウサヒ」による朝日町のPRを皮切りに、全国的に実験的手法による地域振興プロジェクトを手掛ける。2014年1月、地域振興サポート会社「まよひが企画(マヨイガキカク)」を開業。自身が提唱する成功事例の再現を模倣しない活性化手法「非主流地域振興」によって、自治体や公益団体の事業サポートを行っている。また、地域サポート人ネットワーク認定アドバイザーとして、全国の地域おこし協力隊(総務省事業)の支援活動も手掛ける。

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