今回は、山形県山形市の理髪店「BARBERS」を経営する山口智弘さんのIKIKATA。
下積み時代から今にかけて、どのような経緯で独立店を構えるに至ったのか。どんなキッカケで理容師を目指したのか…英国風のおしゃれな「BARBERS」店内で、山口さんの働き方、生き方に迫ります。
私たちの生活に欠かせない「理容師」という職業の魅力をひしひしと感じるインタビューとなりました。
Contens
具体的な業務
山形県山形市の理髪店「BARBERS」の店長をしています。
お店は10時オープンなんですが、8時前にはもう(自分は店に)来ていますね。一日の流れとしては、掃除して買い物して…と10時開店までにそういったことを終わらせつつ…今は自分ひとりで店舗をやっているので、予約優先という形にして営業しています。予約の方と一般の方でタイミングが被ってしまった場合は、予約の方を優先することになっています。
このお店を構えてから気づいたのは、「お客様のいない時間にも、やることはいっぱいある」ということですね(笑) 事務作業だとか、そういったことも自分でやらなくてはいけませんので。
—ということはオープン当初に想定していたよりも客数が多いのでしょうか?
僕は山形でずっと理容師としてシゴトをしてきています。これまで2店舗を経て独立したんですね。以前のお店で来ていただいていたお客様に来ていただくことなどもあって、固定客の方はけっこういらっしゃいますね。
—理容師さんは、髪の毛をカットしている間に(お客様と)会話をしますよね。そのときの「話題作り」はどうされているのでしょうか?
「BARBERS」は男性専用のお店なので、やっぱりシゴト関係の話題がメインになりますよね。あとは家族のお話。もちろん、「ご家族はいらっしゃいますか?」と直で聞くのは失礼すぎるので(笑) 「今日はお休みの日なんですか?」という形で話をしますね。
そこから、たとえばお客様のプライベートの話をする、という流れです。でも男性は、カットの間に「寝る」方も多いんですよね。そういったところはちょっと美容室といわゆる「床屋」で少し違う部分かもしれません。
お客様の中には、「休める場所」として理髪店をとらえている方も結構多いんですよ。ですから、お客様のそういう部分を察して、「会話をするかどうか」などの配慮をすることはありますね。
—男性専用の理髪店ということですが、「専用」にしたのには何か理由があるのでしょうか?
一つは、やっぱり「店としての”色”を出すため」というのがありますね。なんといっても「印象に残る」ようなお店にしたくて。
(印象に残る点で言えば)それ以外にも、たとえば開店時間を夜まで長くしてみたり。
特にこの「BARBERS」のある場所は、通勤される方が通る道路に面しているので、帰宅途中に立ち寄っていただけることも多いんですね。そのために、時間の工夫もしていますね。
今の仕事に就いたキッカケ
高校卒業と「床屋」への決意
高校は農業を中心にして勉強する学校だったんですよ。高校卒業と同時に就職しようと思っていたんですが、進学も考えていまして。そこで母親に進路について相談したときに「手に職つけろ」と言われたんですね。
そこで、まず中学校からずっと通っていた床屋さんに相談したんですよ、「床屋を目指すのはどうか?」ということで。そしたら第一声で「止めとけ」と。
「拘束時間が長い、給料少ない、休みがない。だから床屋をやるというのは簡単なことじゃないんだ」と。でも、「やりがいはある」とも言われて。
そこで、「やろう!」と決めて、理容師の専門学校に入学したんです。
専門学校での学び
—専門学校では、どのようなことを学ぶのですか?
まずは基本的な技術からです。最初はシャンプーの仕方から学ぶんですよ。それから、「お顔剃り」「カット」「マッサージ」…と続きます。その他にも、「理容理論」「衛生管理」など、座学の勉強もさまざまでした。
自分が通っていた学校は、エステやネイルを学ぶ機会もありましたね。
個人的には、座学で学ぶことよりも実技のほうが心配で(笑) 理容師の資格を取得するためには、仕上がりではなくて「プロセス」に気を付けなければならないんですよ。具体的には、「姿勢」や「手順」が評価基準として重要なんです。
理容師は国家資格なんですが、学校を2年間で卒業して資格試験を受ける権利を得ることができたんですね。その後、理容師の資格を取得しました。
5年半の修行
先ほどの、中学のころから通っていた床屋で5年半ほどはたらいていました。
お店によって、見習いがどれくらいの時期で実際に「カット」をやらせてもらえるのかはまちまちなんですね。長い間カットをさせてもらえないケースも多いんですよ。
でもその店ではどんどんカットをさせてくれまして、もちろん怒られながら少しずつできるようになったという感じでしたが、そのおかげで、理容師の大会で県2位を取れるほど技術が身につきましたね。
その後、チェーン店の理容店で1年半ほどはたらきました。その店はお客様の回転率がすごく高かったこともあって、カットの経験数は劇的に増えましたね。
「BARBERS」の開店
—その後、「BARBERS」として独立される山口さんですが、このお店を開店するにあたって苦労されたことはどんなことでしょうか?
まずは、開業のための融資を受ける必要があったので、信用金庫に行って。そこで、「お店のコンセプト」を聞かれたんですね。メニューから何から、全部具体的にしてから言ったので、説明した際には「それだけ(コンセプトが)固まっていれば大丈夫ですね」と言われましたね(笑)
「BARBERS」の店舗として使っているこの建物は、もともと花屋をしていた建物だったこともあって、「補強」が大変だったんですよね。業者さんに頼むと莫大な費用がかかるので、知り合いの道具屋さんや家具屋さんにお願いして、マージンがかからないように助けてもらって…開店するに至りました。
オープンの5日前まで以前の職場には勤めていたので(笑) それは大変でしたね。
仕事で工夫していること・考えていること(職業観・ポリシー)
メニュー方式の工夫
(カットのみ、シャンプーとカットなどの)メニューには工夫をしています。「自分が必要とするものだけを選べる」ように、単品メニューを組み合わせる方式にしているんですよ。
また値段設定に関しても、「端数をそろえる」という工夫をしています。お会計に手間がかかってしまうことを嫌うお客様もいらっしゃいますからね。
お客様の様子を「察する」こと
お客様によっては、会話をする場合でもあまりガツガツしないようにしたり、カット中に寝たい雰囲気のお客様には話を止めたり…と、何気なく「察する」ことを心がけていますね。
お客様のニーズに合わせる
メニューにしても、お客様の様子を察することにしても、全部に関してお客様の要望にかなうように意識しています。「男性専用の理髪店」ですから、男性をターゲットにした「お客様が満足された状態でお帰りいただけるような店づくり」をしていますね。
山口さんのような職種・業種に必要なスキル
「シゴトが好き」
僕の場合は「理容が好きかどうか」「接客が好きかどうか」ということですが、自分が好きでやっているシゴトであると思えるかどうか、という部分はとても大事ですね。
特に、理容師や床屋というと「シゴトの中でいかに”楽しさ”を見つけられるか?」というのが大切です。それがないと続けられない職業だと思いますね。
向上心
まず、理容師という職業は「離職率」が高いんですよ。また、お給料は安い場合がほとんどですし、休日も一般的に月曜なので、他業種の人と「休み」が合わないので予定を組みづらい。
それでもこのシゴトを続けられるのは「向上心」があるからで、それがなければ続けることはできませんよね。さきほどの「シゴトが好き」ということにも関連しますけど、それにともなうシゴトに対する自分の「向上心」を持つことが大切だと思います。
コミュニケーション能力
理容師のシゴトは、「職人半分、営業半分」と言われるほどお客様とのコミュニケーションが重要なんですよ。なので、コミュニケーション能力は必ず必要ですね。
山口さんのような職種・業種を目指す方々へのメッセージ
理容師のシゴトの楽しさ
理容師というシゴトは、お客様からたくさんの情報が入ってくるシゴトです。また、「結果が見えやすいシゴト」でもあるんです。お客様のためになっているということが目で見てわかるんですよ。
そういった目に見える形でお客様のためになる結果を残して、「ありがとう」と言われるのは、このシゴトをやっていてイチバンうれしいことです。
「何のためにはたらくのか?」を考える
僕はシゴト自体が「趣味の延長線上」にあるものになっていますが(笑) やはり、「何のためにシゴトをしているのか?」をきちんと考えることが大切ですよね。
ただ、「お金を稼ぐためにはたらく」というのでは絶対続かないですし。確かに、「では、何のため?」という疑問に対する(自分なりの)答えを見つけるのは、難しいことですけど。
それでも、たとえば僕が「床屋をやる」と決めたように”やる気のスイッチ”を入れるためには、実際に色々なことをやるのが大切なのではないかと思います。
—ありがとうございました!
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