今回は山形で「山形を楽しむためのライフスタイルマガジン La piccola(ラ ピッコラ)」を制作している女性起業家、本間悠美さんのIKIKATA。
企業の代表としてだけではなく妻、そして母としての顔も持つ本間さん。
メディア論から母としての考え方まで多方面からそのIKIKATAに迫ります。
Contens
具体的な業務
山形で「La piccola(ラ ピッコラ)」という女性向けの雑誌を作っています。
普段は会社経営はもちろんのこと、メディアのプロデューサーとして取材や原稿執筆、校正、お客様とのやり取りや他のスタッフのマネジメント、イベントの運営など幅広い業務を行っています。
先日、会社がちょうど3年目を迎えたのですが、ようやくクライアントさんや読者の方のニーズが分かるようになってきました。
‐‐‐それは具体的にどういう風に分かってきたんですか?
これまでも自分たちが企画しているイベントには全て足を運んでいたのですが、どちらかといえば黒子役が多かったんです。ですが、最近は黒子役ではなく自分たちも前面に出て読者の方と対話をしたり声を聴いたりすることで「読者さん目線に立つこと」を掴んでいきました。
私たちは一方的に情報を発信するメディアではなくて、読者の方との“コミュニティ”をつくりたくて。
「みんなでつくるLa piccola」というものを目指しています。
自分たちの伝えたい事を言っていくだけでは、本当に伝えたいことは伝わらないということは仕事をしながら学びました。
みんなに(メディアを)つくってもらっているという感覚は強いですね。
‐‐‐雑誌だけでなくイベントの企画も本間さんご本人でされているんですか?
私が考えることもありますし、アンバサダーさん(※)と一緒に企画することもあります。
※アンバサダー:雑誌の企画のひとつ「やまがたなでしこプロジェクト」で、ある分野に特化した女性を「○○アンバサダー」として任命し、編集部と一緒になってイベントを企画したりライフスタイルを提案したりする方々のこと。
流行りを追うことも考えるし、山形ならでは、La piccolaならでは、という内容も意識しています。
イベントには「認知」「興味関心」「申し込み」「参加」「感想」というそれぞれのフェーズがあると思うのですが、「申し込み」の段階が特に大変で。
1人で行くのは不安だなとか、どういう内容なんだろうと言った読者さんの気持ちを、行動に変えるのは難しい。
でもうちはアンバサダーさんと一緒にイベントをつくるので、内容には自信があるんです。
だからおかげさまでリピーターさんも多いし、満足度も高いんです。
‐‐‐申し込みを増やすために努力したことはありますか?
イベントの趣旨がしっかり伝わるように文言一つひとつに気を遣ったり、そのイベントが読者さんの生活の中で取り入れてもらったり共感してもらったりするようなイベント名や内容を考えたり…とにかくいろいろ試しています。とはいえ、「このイベントは何のためにやっているんだろう」と自分たちがいつでも立ち返れる骨子をしっかり作ることが一番難しく且つ大切であると思うので、そういった部分は曲げないようにしています。
そうすると、想いに共感してくれたり協力をしてくれたりする方が増えて、結果、イベントには山形県内のあらゆるところからお客さんが来てくれるようになりました。
今後はLa piccolaももちろんですが、女性の起業家として、もっと強い想いやメッセージを持って仕事をしていきたいかなと思っています。キッズビジネスとかもやりたいことの一つですね。
今の仕事に就いた経緯・キッカケ
大学時代
大学生の頃、初めは公務員になろうかなと思って公務員試験の勉強をしていたのですが、途中で挫折してしまったんです(笑)
そうなったとき、他の人は就活をするわけなんですが、私は「社会に対して何を価値として生み出して、それをお金に換えることができるんだろう?」という疑問があり、結局答えが見つからないまま卒業をしました。
今思えば、何も知らないし出来ないくせに、何か出来ると思う方がおこがましいんですけれどね(笑)きっと焦っていたのだと思います。
卒業後もまだ何がしたいのかが分からなかったので、待ってても何も始まらないし、失うものも何もないことに気付いたので、まずは自分の会いたい人に会いに行ったんです。
そこでいろんな価値観や考えに出会い、なんとなくのロールモデルが見つかりました。
そこから更に考えて、自分は地元の山形で何かしたいと思ったし、もっと山形のことを知りたいなと思ったんです。
初就職へ
最初の転機は、山形でフリーペーパーをつくっている会社に就職したことでした。山形に密着した情報を発信しているため、県内のいろんな場所へ取材に行ったりネタを掴みにいったり…
そこでは広告掲載の営業を中心に仕事をしていたのですが、人と会って話すのがすごく面白かった。
今思うとそれがメディアを意識したきっかけでしたね。
でも当時は、既定の広告枠というものでしかお客さんの良さを表現できないことに窮屈さを感じてしまって。結局その会社を1年で辞めてしまったんです。
転職から起業へ
次は山形で雑誌を制作している会社に入りました。
でも、また同じ壁にぶつかってしまったんです。
私だったらこういう提案をしたいのに…という思いが強くなっていったんですが、やはり会社にはその会社なりのルールややり方があって。環境や上司には凄く恵まれていていい職場だったのに…今思うと本当に生意気だったな、と反省しています。
で、話を戻すと、自分が渾身の思いで手掛けたものを、いろんな人に見てもらいたいなと思うようになり、自分で会社を設立してLa piccolaを始めました。
‐‐‐起業するときの不安はなかったんですか?
もちろんお金のことや、自分の考えていることへのニーズが本当にあるのかなど、不安はありました。
でもやってみなければ分からないし、やらないよりやったほうがいいと思ったんです。
本間悠美(ほんま・ゆみ) 1988年生まれ、山形市出身、西村山郡西川町在住。山形西高、山形大学人文学部法経政策学科卒業後、広告代理店に入社。フリーペーパーや雑誌等の広告営業をする中で、「山形に暮らす女子に彩りをもたらすライフスタイルを提案したい」と思うようになり、2014年1月に企業組合Press L(現・株式会社Press L)を設立。雑誌La piccolaの制作・発行を中心に、企業様とイベントを開催したりプロモーションを行うなど、山形×女性×ライフスタイルをテーマに活動。今年は新たにキッズビジネスにも参入予定。
仕事で工夫していること・考えていること(職業観・ポリシー)
「流行りと古き良き」の二兎を追う
今世の中でどんなことが流行っているかといった時流を追うことはもちろん意識していますが、根本的な良いものってなかなか変わるものではないので、ずっと受け継がれてきている物語やメッセージはきちんと残すようにしています。
たとえば今ちょうど発行されているLa piccola2-3月号では「紡ぐ」という特集をしました。「過去」から「今」に紡がれているもの、「今」から「未来」に紡いでいきたいもの。いろんな紡ぐカタチがあると思いますが、「温故知新」という言葉があるように、古くからあって変わらないものをもう一度知り、そこに自分という存在を加えることで新しい価値をおく。
守るべきものは守って、新しい風を入れるようにしています。
あらゆることを「自分ゴト」として捉えて頂く工夫
「山形って面白いものないよね」という考え方はナンセンスだと思っていて。
実は山形って色々揃っているんですよね。
遊ぶところもヒトもモノも。
情報が溢れる今の時代、いろんな価値観に流されがちですが、目の前のことにしっかり向き合うことが出来れば、自分にとって大切なものやこと、必要・不要が自然とわかってくると思うんです。
だから「今置かれている環境や状況をいかに自分ゴトとして考えてもらうか」という手法をメディアを通して発信しています。
考えるキッカケや選択肢を提供するのも私たちの役割なのかなと思っています。
読者との距離感を考える
伝えたいことは沢山あるのですが、でもそれがその人にとっての正解かはわからないですし、押しつけないように、でもニュアンスがうまく伝わるようにという距離感は大切にしています。
あれがいい、これがいい!ではなくて、こんなものもあるよ!という提案の仕方。
人と人、企業と企業、人と企業の架け橋のようなメディアでありたいと考えていますし、それが私たちメディアの存在意義なんです。
本間さんのような業種・職種を目指すために必要なスキル
好奇心と探求心
技術とかスキルは後で良いと思っています。
むしろ余計な知識や固定観念がある方が危険ですよ、きっと。
‐‐‐好奇心と探求心はどうすれば生み出せるんですか?
あらゆることに疑問や関心を持つことですね。
これはどうやってできているのか、誰の手によって生み出されたものなのか、等々。視点はいくらでもありますが…。
自分が興味を持つことはとにかくなんでも取り組む。それの積み重ねですね。
ロールモデルを持つこと
道がないものを目指すって相当難しい。だから先にやっている人を見つける、調べる。
ああいう人になりたいなと思うことで、具体的にやるべきことが見えてくるんです。
もちろん同じようにはなれないけど、そこにヒントがあると思っています。
私も人生のフェーズごとにロールモデルがいました。
でもこれは何かに特化した技術がある人には必要ないのかもしれないけど。
そうじゃない人は必要ですよね。
本間さんのような業種・職種を目指す方々へのメッセージ
とにかく好奇心探求心を持つこと。人に会いに行くことが重要です。
あとは気になったことはすぐ自分で調べること。できれば書籍で。
WEB上にもいい情報はたくさんありますが、WEBはやはり「情報」で、本や書籍は「物」だと思うのです。質感や重さ、色合い、構成…。本にはそれぞれの著者の魂が入ってるんです。
だからたとえ同じジャンルの本でも違う価値観がたくさん詰まっていて、比較検討ができる。
世の中に答えは一つじゃないので、多方面の話を聴いたり読んだりしてほしいです。
‐‐‐今後、子育てもしながら働くということで目標はありますか?
私は現在、社長、編集長、妻、母、嫁、といういろんな肩書があるんです。
だから何?って感じですが(笑)、大変だろうけど、楽しんでいきたい。
いろんなことを楽しむ達人になりたいですね。
‐‐‐どんな母親になりたいですか?
私は西川町という山形県のど真ん中にある町に住んでいます。自然がとっても豊かで、私が理想とする子育てにはぴったりの場所。人口がどんどん減少しているなどといった問題も多くありますが、先ほども言ったように好奇心や探求心をもって、目の前のことを楽しめるような子に育つよう、いろんな選択肢を与えられる親でありたいと思っています。
また、西川町には素敵な方が本当にたくさんいらっしゃいます。私自身もそうですが、地域の人に育てていただきながら成長できればと思っています。
‐‐‐今回はメディアへのこだわりから子育て論まで様々なことを教えて頂きました。ありがとうございました!
インタビュアー:木村未来