特定非営利活動法人ハーベスト 代表理事 山﨑賢治氏 「何を」言うかではなく「誰が」言うか 子供が色んな大人から話を聞く価値とは?

スポンサードリンク

今回は、NPO法人「ハーベスト」代表理事としてご活躍されている山﨑さんのIKIKATA。

公務員としての経験を通じて、アントレプレナーシップを持つ人の育て方を考え続けてきた山﨑さんの経緯や、取組みについてインタビューさせていただきました。

激動する時代の中、今の子どもや大人にとって「すべきこと」とは何か。社会を生きるための考え方を学べる内容となっています。

 

具体的な業務

 

宮城県職員としてのシゴトの傍ら、「特定非営利活動法人ハーベスト」代表理事をしています。

「ハーベスト」では高校生や中学生を対象としたキャリア教育支援の事業を行っていて、大人と若者の出会いの機会を増やす活動をしています。

具体的な事業の一つとして、「授業導入型キャリアセミナー」があります。

中学、高校生向けに学校の授業の一環として一度に20名~40名の市民講師に集まってもらい、少人数の車座で講話を行うプログラムを提供していて、それぞれのシゴトや生き方について話をしていただくものです。

中学、高校生に社会経験を伝えてもらい、子どもたち自身が「キャリア」「生き方」を自分で切り開く力を持ってもらえるような機会を提供するための事業を展開しています。

キャリアセミナーでは、毎年,講師が約200人ずつ増えており、現在では1700人以上の講師が登録されています。仙台だけではなくて、宮城県内の高校、中学校で開催しています。

講座で話していただく内容は、自身が取り組む仕事についての話をはじめ、「失敗談」や「苦労話」のような具体的なこと。たとえば、ある市民講師の方には、「転職した会社が全部倒産してしまった」というエピソードを紹介して頂けました。このように、「一筋縄ではいかない人生の山谷」について語ってもらうこととしています。そういう体験は、社会を出る前の中高生にとっては、社会に対する一つの”未知の恐怖”じゃないですか。

でも、そんな失敗を乗り越えてきた方々が社会を、世の中を回している。そのことに実感を持ってもらうためにキャリアセミナーを開催して、中学、高校生に様々な経験を持つ方々と出会ってもらう「機会創り」をしています。

988408_728789760537641_2054393422977848323_n

 

今の仕事に就いた経緯・キッカケ

 

シゴトで気づいた「形式合理性」

 

僕は、公務員として(シゴトを)やっていく中で、感じたことが一つあります。

それは、「大きな組織に入ると分業制が発達している分、”外の世界”が見えにくくなってしまう」ということ。

企業や官庁は(スローガンだけではいけなくて)計量的な数値や指標をもとに、結果を残さないといけません。だから、「KPI」を立ててやりなさいということになる。でも、カタチばかりの指標を追うだけではなくて、本当の「エンドユーザー」という外の世界を明確にしないと、モチベーションを維持するのは難しいんですよね。

だけど、どうしても「KPI」がどうだったかという「形式的合理性」を第一に考えてシゴトをせざるを得ない。

税金だったり、法律や規則に基づいて何かをすることが多い公務員には、ある程度そういったシゴトの仕方が必要になる。しっかりシゴトをしているかどうか、という点のエクスキューズ(説明)が、とても重要になってくるんです。

他県に出向してその県の「企業誘致」をするシゴトをしているとき、自分のシゴトはその「形式合理性」の部分ばかりではないかと感じた。ある意味、「言いわけ」のために資料を作っているような気がして、「何やってんだ、おれ?」と泣いてしまうくらい情けなくなりました。

そこで、「このシゴトは、(本当に)公(だれか)の福祉(しあわせ)に繋がっているのか?」という部分に疑問を持つようになり、ちゃんとそこを見据えてシゴトに取り組みたいという思いを強く持ちました。それが、今の活動に繋がるキッカケになっていますね。

 

「誰かに貢献する人たちの発見」

 

転機は、他県に出向していた際に担当していた「企業誘致」に必要な計画づくりの過程にありました。

「企業誘致」の目玉となる施設を整備するための計画を立てるために、様々な企業の社長さんを30人ほど取材して、ヒアリングをする必要があったんですね。

大手自動車メーカーの下請け企業さんだったり、航空機関連の企業さんだったり、様々な企業の社長にお話を聞いて、「(県が整備する施設の計画を)どういう風にすべきか?」を聞きにいく。

その取材で様々な企業の社長さんから聞いた話が、すごく面白かったのが印象に残っています。たとえば、チタンのネジを製造する会社。「うちのネジは,一本で一万円だ」と自分の会社の技術力を自慢する社長さんがとてもイキイキと話をしてくれるのですよ。

社長は自分の人生を賭けて、誰かに”コミット(貢献)”できるモノをしっかりと作っている。さっき僕が話した、自身のシゴトに対して感じた形式合理性ではなくて。

その経験があって、「経営者の方々みたいに、具体的に顧客に対して”コミット(貢献)”できるシゴトをしている人って素敵だな。”自分の時間”を生きている人だな。」と思うようになって。

そこで,はたと気づいたのが、「イキイキした経営者や職業人というのは社会に繋がって、そこで自分の”道”というものをしっかり押さえて頑張っているんだ」ということ。

そして、そういう人は自分のしているシゴトが誰かに繋がっていることや、「エンドユーザー」がしっかりと見えていて、そのために頑張っていくことができているということなんですね。

 

アントレプレナーシップを持つ人材の育成という「ステージ」

 

他県でのシゴトの後、宮城に戻って自分に気づきを与えてくれた中小企業さんや起業家を支援する仕組みづくりを担当することになった。その仕組みというのは、支援の中で相談のあった事業の弱みを見つけて、その解消を図ってキャッシュフローが流れるようにしてあげる。

あるいは、資金面だけではなく、製造プロセスを専門としている人たちも含めて一度に相談できる、そういった仕組みを「作ってみよう」ということになったんです。

その「支援する仕組み」は、結構順調にできていたんですが、そこでまたふと気づいた。

素晴らしい「支援する仕組み」ができても、そもそもその(支援するまでの)ステージに登ってこれる人たちが十分いなければならない。そうしないと支援窓口だって、「開店休業」状態になってしまう。

そこで、(支援する仕組みだけではなくて)起業家の予備軍を育てる「ファーム」がなければダメではないかという議論になり、事業の「アイディア」や「プラン」はあるけれども、どのように具体的なものにしていくべきがが分からない、そんな方々に対する起業の基本を教える講座というものが必要だと考えたんですね。

そういう場でさらにより多くの人の中に「アントレプレナーシップ(起業家精神)」を育てる仕組みがないと、と考えて、そのためには、やはり「起業家教育」というものが大事だということが分かってきた。

その頃は,ちょうど楽天の三木谷さんだとか、ホリエモンさんが出てきたころで、国もそういった”アントレプレナーシップを持つ人材”の育成が必要だと感じてキャリア教育に着目し始めてきた時期でもありました。

経済産業省では、いわゆる社会人基礎力、文部科学省では、基礎的・汎用的能力というものを育成が重要と言われるようになったり、そのような力能を養成するために学校で「総合的な学習の時間」が活用されていたのも、このころですね。

 

「ステージ」を創るためのキャリアセミナー

 

その後、実際に小学校でアントレプレナーシップを育成するための「場づくり」に取り組む校長先生が、子どもたちが自分たちの学区内の「地域の資源」を見つけて、それを活かした商品を作る。自分の”会社”を創ると。そういう模擬店の運営を通じて、アントレプレナーシップ教育を応援することとなりました。

そこでは、子どもたちが活躍する場面がたくさん出てきます。勉強やスポーツでは自分の力を発揮できなかった子どもたちが、様々な場面で、自分の”持ち味”を発揮できるんです。

当時、そういう取り組みはどんどん増えてきてはいるけど、あくまでも希望制なので、参加する子どもたちが限られていていました。ここで先にお話をした中小企業の支援をしていたときと同じ構図になってしまった。つまり、そんな「ステージ」に上がってくる層を増やさなければ,底上げできるような、そのキッカケをどうにか与えなければだめだと思いました。

たとえば、学生団体に入ろうと思うときには、「入る」というキッカケがあるはず。でもその入るキッカケに到達するまでのキッカケはやっぱりある。

そのキッカケを提供することができたら、それが「答え」だと、そう考えて。アントレプレナーシップを持つ「キッカケ」を提供することが大事だと。なので、どうしたらそんな「キッカケ」を提供できるのだろうかということが大きな悩みとなりました。

その答えは愛知で見つかったのです。愛知には、「愛知サマーセミナー」というイベントがある。誰もが生徒、誰もが講師になることができて、市民参加型セミナーを開催していて、訪問した時には、1000を超える講座が開催されていたんです。それを目の当たりにして,答えは「これだっ!」と思ったわけです。

それだけの選択肢があれば、さすがにどんな子だって、「あ!これは聴きたい」って講座がきっとあるはず。自ら動くまさに「きっかけ」になるんだなって。

それを「ハーベスト」でもやろう、ということになったのが、今のキャリアセミナー事業を展開するキッカケになりました。

山﨑 賢治(やまざき けんじ)/NPO法人ハーベスト代表理事(宮城県庁勤務)宮城県仙台市出身、1969年生まれ、山羊座、A型。泉館山高(弓道部)⇒山形大学人文学部法学科卒(刑事訴訟法ゼミ)。 1992年宮城県庁入庁。岐阜県庁への派遣、(財)みやぎ産業振興機構、県教育委員会への出向などを経て現在は農林水産部農業振興課に所属。中小企業支援・起業家育成に取組んだことを契機に人材育成・教育分野をライフワークとし,10年前のファイブブリッジの創設に関わる。その後、キャリア教育をミッションとするNPO法人ハーベストの立ち上げに参画、2014年より代表理事を務める。座右の銘は「笑って棺桶」。10年後の夢は「学び合いのコミュニティを実現し、ネクストソサエティの基礎を創る」。

山﨑 賢治(やまざき けんじ)/NPO法人ハーベスト代表理事(宮城県庁勤務)宮城県仙台市出身。1992年宮城県庁入庁。岐阜県庁への派遣、(財)みやぎ産業振興機構、県教育委員会への出向などを経て現在は農林水産部農業振興課に所属。中小企業支援・起業家育成に取組んだことを契機に人材育成・教育分野をライフワークとし,キャリア教育をミッションとするNPO法人ハーベストの立ち上げに参画、2014年より代表理事を務める。座右の銘は「笑って棺桶」。

スポンサードリンク

この記事を好きなツールでストックしよう↓

転職サイトをまとめて見るなら【IKIKATA Database】

IKIKATA Databaseは各業界の転職サイト・エージェントをニーズ別にまとめたサイトです。転職を検討している方は是非ご覧ください。