「明日から使える心理学」では、日常生活や仕事で使える心理学用語を解説しています。
今回ご紹介するのは、「リンゲルマン効果」と呼ばれる心理学用語。仕事効率やチームマネジメント、会社経営などを考える際に、重要な示唆を与えてくれる心理学の知見です。
また、日常生活で「集団心理」に惑わされないようにすることにも役立ちます。「人数が増えれば、その分手抜きをする人が増える」というリンゲルマン効果…なぜこんなことが起こりうるのでしょうか。
今回は、リンゲルマン効果の意味と起きる原因、具体例と活用と対策を解説していきます。
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「リンゲルマン効果(社会的手抜き)」|意味と原因とは?
リンゲルマン効果(現象)の意味とは?
「リンゲルマン効果」とは、別名「社会的手抜き」「リンゲルマン現象」「リンゲルマンの法則」とも呼ばれている心理学用語のひとつ。
その意味は、「単独作業よりも、集団で作業する方が一人当たりの作業としてみるとき、課題遂行量が低下してしまう現象のこと」です。
要するに「人間は集団になればなるほど手抜きをする」という心理を指します。
つまり、一人ではなく集団の中で自分だけ見られることはない、自分だけが評価されることはないという環境では、努力する必要性を感じなくなりパフォーマンスが下がる心理的な効果です。
リンゲルマン効果が実証されたキッカケ
リンゲルマン効果を確かめるためには、実際にどのくらいの「手抜き」をしているのかを正確に数値で実証しなければいけません。
具体的な実験でそれを実証したのがドイツの心理学者リンゲルマン。彼は「人数を変えて綱引きする」という実験で、この効果を実証したのです。
現代社会でも、「チームで目標を達成する」ことはビジネスでもそれ以外の活動でも必須の条件です。
よって、組織をマネジメントを考える際の注意ポイントとして、この「リンゲルマン効果」をおさえておくことには重要な意味があります。
リンゲルマン効果の原因
リンゲルマン効果を「社会的手抜き」と名付けた研究者・ラタネは、リンゲルマン効果が実証された綱引き実験とは別に様々な実験をおこない、リンゲルマン効果を他の視点から実証しました。
その中で、リンゲルマン効果が起きる仮説を見出しました。
その仮説とは「人は特定の仕事をおこなうときに周囲に対して自分の貢献度が隠れている場合には怠惰になる」というもの。この仮説は「hide-in-the-crowd(雲の中に隠れる)」と呼ばれます。
たとえば、あなたが働く会社の仲で給料が全員一律になったとします。あなたが一生懸命働き売上を挙げても、社内の評価や給料は変わらず、褒められることはありません。
そうすると、あなたは手抜きをして楽に仕事をこなそうと思うのではないでしょうか?
リンゲルマン効果は、私たちの生活や企業のおける社員への評価基準に至るまで、様々なところで実証性が確認され対策が取られているのです。
「リンゲルマン効果(社会的手抜き)」の具体例
リンゲルマンによる実験
さきほどご紹介したドイツの心理学者リンゲルマンは、「綱引きに参加する人数が増えるたびに、相乗効果でより大きな力が発揮される」と予想して、下記の実験を行いました。
一人で綱引きをさせるとき→2人で綱引きをさせるとき、そして3人で綱引きをさせるとき…綱引きをする人数が増えるごとに「個人が発揮するチカラの変化」を調べたのです。
結果は思わぬものとなりました。2人で綱引きをした場合は期待値の93%、3人で綱引きをした場合は85%、8人だと49%と、どんどん「一人一人のチカラが発揮されなくなる状態」になっていったのです。
ここから、「メンバーの人数が増えるほど、一人あたりの貢献度が低下する現象」が「リンゲルマン効果」となったのです。
ラタネとハーディの実験
研究者・ラタネとハーディがリンゲルマン効果を確認するために行った実験でも、リンゲルマン効果は実証されています。
この実験では、目隠しとヘッドホンを装着してお互いの行動が見えない/聞こえない状態にした2人1組のチアリーダー を、衝立を挟んで座らせ大声を出してもらう方法を取りました。
騒音計を用い、音量計測の実験すると「ペアで大声を出したとき」と「単独で大声を出したとき」では、単独で大声を出したときのほうがより大きな声が出たことがわかりました。
単独では一人の声しか評価されないため最大限の努力を行い声をだすことができる一方、ペアで大声を出すときはもうひとりに依存し声が数%小さくなったのです。
しかも、ここで重要なのは、2人ともどちらの場合も手抜きをせず本気でやっていたと考えていたことです。
意識的に手抜きをしようと考えていたのではなく、結果として無意識に手抜きをしてしまったことになります。
以上のことから、リンゲルマン効果は「社会的手抜き」と呼ばれ様々な実験で実証されています。また、意識的に「サボってやろう」と思っていなくても、そうなってしまうという点が重要になります。
つまり「サボった人を叱りつける」「手を抜いた人を指摘する」などの方法では、リンゲルマン効果を克服することはできないということです。
一人ひとりをしっかり見て評価してあげられる仕組みを作らないと、チームや組織の生産性は低下してしまいます。
「リンゲルマン効果(社会的手抜き)」の活用法と対策
リンゲルマン効果は、その効果を知っておくだけでチーム作りに活用することができます。また、日々の生活の中でもその効果をできるだけ回避して行動することができます。
チーム作りではメンバー一人ひとりに「役割をふる」ことを意識する
たとえば、あなたが5人のチームを率いるリーダーとして、指示を出す立場にいます。
この場合、メンバー5人全員に「この作業をやってくれ!」とお願いするだけでは、「誰かがやってくれるだろう」と「リンゲルマン効果」が働いてしまいます。
それを回避するためには、「Aさんは○○を担当してください」「Bさんは○○でお願いします」と細かく明確な指示をすることが大切です。
また、「2人に協力させて一つの作業を行ってもらう」場合でも、そのうち「どの部分を担当するのか?」を明確にしておくことで、「一人当たりの貢献度」を下げずにチームの目標を達成することができるでしょう。
また、それぞれに任せた進捗度は常に全員で共有しておくと、なお無意識的な手抜きがなくなります。
「限定」が人を動かす
たとえば、人ごみの中でうずくまって倒れている人を発見したら、周りに助けを求めますよね。
その場合すぐに人を呼ぶためには、「誰か助けてください!」と呼ぶよりも、「そこの電柱の前に立っている男性の方々、助けてください!」と”限定”して呼ぶべきです。
首都圏で「人と人の関わり合いが薄い」と言われる要因は、「リンゲルマン効果」にあるとの考え方もあります。
「自分は役割を果たす必要がない」と思ってしまう心理を解消することは、人とのコミュニケーション・協働の面で重要であると言えます。
チーム作りと同様に「一人に着目した貢献度」を最大限活用する方法を学ぶ。
集団心理をうまく活用しつつ、自分はそれを意識して集団心理に惑わされないようにする。その第一歩として、「リンゲルマン効果」を知ることが大切です。
リンゲルマン効果と傍観者効果の違いと関係性
傍観者効果とは?
リンゲルマン効果と似ている心理学用語には「傍観者効果(ぼうかんしゃこうか,bystander effect)」と呼ばれる集団心理があります。
これは、活用法の2でご紹介した内容と似ているもので、「自分以外に傍観者がいると、自分が率先して行動を起こさない心理」のことです。
リンゲルマン効果と似ているのは、人が集団になっているときに現れる心理的な効果であることや、他人の存在が自分の行動を抑制しているということになります。
傍観者効果が起きる原因とは
傍観者効果が起きてしまう原因には3つの要素があります。
- 多元的無知:他者が積極的に行動しないため、緊急性のあることではないと考える
- 責任分散:他者と同調すれば責任・避難が自分にだけ向かなくなり分散されると考える
- 評価懸念:自分が行動を起こした結果に対しての周囲からの評価を恐れる
どれも「人の目を気にして何もできない」という心理の表れと言えるでしょう。たとえば、「誰か答えて」と教師が教室で質問しても、誰も手を挙げて答えない。これも傍観者効果のひとつです。
傍観者効果を克服して勇気を持って行動するのは、思っている以上に難しいことなのです。
傍観者効果の具体例
傍観者効果は、1964年に起きた「キティ・ジェノヴィーズ事件」と呼ばれる殺人事件がきっかけになり提唱されたものになります。
この事件では、深夜の自宅アパートでキティ・ジェノヴァーズが暴漢に襲われたとき、近辺の住民38名が寺家を目撃したのにも関わらず、誰も警察に通報せず助けることもなかった…ということから、当時大々的に報じられました。
この事件を受けた研修者・ラタネとダーリーは、「多くの人が気づいたことで、誰一人として通報したり助けたりすることがなかったのではないか?」という仮説を持ち、実際に実験によってそれを確かめたのです。
眼の前で見ていたのにも関わらず、誰一人として助けることがなかったと聴くと、周辺住民の冷酷さを最初にイメージする人が多いかもしれません。
しかし、この事件が象徴的に表しているのは、集団心理によって人は残酷なこともできるようになるということなのです。
リンゲルマン効果や傍観者効果も、「自分は当てはまらないだろう」と考えている人は必ず陥ります。自分もその効果の影響を受けて行動していることを踏まえたうえで行動することが大切です。
この記事を読んだ人におすすめの記事
「リンゲルマン効果」は心理学的に実証されていますが、「実体験」を通してそれを知っている方も多いでしょう。
人数が多ければ多いほど、「手抜き」が作用してしまう気持ちは、感覚的に理解できますよね。
人の心理はなかなか変えがたいものではありますが、仕事に関してはこのような「リンゲルマン効果」をなるべく抑える考え方・行動が大切です。
そのためには「ものごとに取り組む際の自主性・主体性」を知る必要があります。
コチラの記事もぜひ参考にしてくださいね。
リンゲルマン効果を学べる本
人は集団で仕事をする。しかし集団になると人は怠け、単独で作業を行うよりも一人当たりの努力の量が低下する。これを「社会的手抜き」という。例えば非効率な会議や授業中の問題行動、選挙の低投票率、スポーツの八百長などは「社会的手抜き」の典型である。
本書では、このような「手抜き」のメカニズムを、多様な心理学的実験の結果から明らかにしていく。その防止策とは、はたまた功罪とは。リーダー・企業人必読書。
今の職場に満足してる?リスクなしで転職するための4つのコツ
ここでは、今の職場や待遇、働き方に不満を抱いている方に向けて、転職活動を始めるにあたって必ずおさえておくべきことをご紹介していきます。
転職活動というと、下記のようなイメージがあるのではないでしょうか?
- 「失業リスクがある」
- 「これまでに積み重ねた経験・キャリアがムダになる」
- 「転職すると給料が下がる」
- 「新しい環境に慣れるのが大変そう」
しかし、この4つの不安は下記の「4つのコツ」で解消することができます。転職したいと考えているけど、不安を解消できないと感じる方はぜひ参考にしてください。
1 転職活動に失業リスクはない!
転職活動を始めるにあたって最も不安なことは、「転職活動をすると、失業するのではないか?」というものだと思います。
一般に、仕事を辞めたり、退職して他の仕事を始めたりすることには、ネガティブなイメージを持つ方も大勢います。しかし、それは”間違い”です。
大手転職サービスを運営している「リクナビ」が公開しているデータには、こう書かれています。
20代では76%が「転職経験なし」という結果となっています。30代になると「転職経験なし」の割合は一気に減少し、半分以上の人が転職を経験。4人に1人は「転職1回」、そして約3割の人が「2回以上の転職」を経験しているという結果になりました。
20代では「10人中3人以上」、30代では「4人中1人以上」の人が転職活動を経験しています。
つまり、今では転職活動自体はそれほど珍しいことではなく、むしろそれが当たり前になってきているのが現状です。
ではなぜ、転職活動をすることができる人が増えているのでしょうか?理由は大きく2つあります。
理由1 「中途採用を積極的におこなう企業が増えた」
人材市場・転職市場の動向をアンケートをもとに調査しているリクルートワークスが公開したデータでは、近年は中途採用を積極的におこなう企業が増えたことが示されています。
2018年度の中途採用の見通しについては、「増える」(18.6%)が「減る」(4.0%)を大きく上回っている。
つまり、転職市場は「売り手市場」で、人手不足は飲食業界・情報通信業界(IT)・不動産業界を中心に活発に採用活動が行われていることを示しています。
理由2 「転職活動を在職中にできるサービスが増えた」
転職市場が売り手市場だといっても、「実際に自分のもとに内定が来るかは分からない」という不安は残りますよね。
しかし、その点についても心配いりません。今では、「働きながら転職活動をすること」がふつうです。
たとえば、一昔前までは、下記のすべての転職準備を、自分で調べながらやる必要がありました。
- 求人を探す
- 履歴書・職務経歴書を作成する
- 面接準備をして面接日程を応募企業と調整する
- 面接を1次〜3次まで突破する
- 給与条件や入社日を人事側と調整する
- 今の会社を辞めるための退職手続きや保険関係の手続きをおこなう
これだけ見ても、かなり大変であることがわかりますよね。
でも今は、「転職エージェント」を活用することができます。
転職エージェントとは、あなたの代わりに希望条件に合った求人を選び、人事側とスケジュール調整をしてくれたり、履歴書や職務経歴書の添削サポートをおこなってくれたりする無料サービスです。
そのため、転職するために仕事を先に辞める必要はありませんし、会社にバレる心配がありません。また、自分で準備するのは最小限にしたうえで転職活動をおこなうことができます。
…
以上2つの理由から、転職活動にリスクがないことがおわかりいただけたのではないかと思います。転職エージェントについてもっと詳しく知りたいという方は下記記事をご覧ください。
おすすめ記事:転職エージェントとは?おすすめの選び方と比較ポイントを徹底解説!
おすすめ転職エージェントは下記記事でご紹介しています。活用法や利用の流れも解説しているので、「転職エージェントを選びたい」という方はぜひ参考にしましょう。
また、「自分で求人を探したい」「自分のペースで求人を見てみたい」という方は、こちらの「転職サイトランキング」を参考にしてくださいね。
おすすめ記事:おすすめ転職サイトランキング!選び方や登録後の流れ、活用法まとめ
2 これまで積み重ねてきた経験・キャリアは転職で活かせる
転職するときの悩みのひとつとして多くあげられるのは、「これまで積み重ねてきた経験・キャリアがムダになってしまうかもしれない」という不安です。
特に、30代前後である程度長く職場で働いてきた方や、エンジニアや金融・不動産などの専門的な営業をしてきた方は、そう感じることも多いでしょう。
これまで得てきた経験を活かすには、「同じ業界・職種/業種で活躍することができる仕事」を探すことが大切になります。
「同じ業界・職種/業種」で活躍することができる仕事を探すには、「業界・職種/業種に特化した転職エージェントや転職サイトを使うこと」をおすすめします。
あなたの経験・キャリアを正しく評価してくれる職場であれば、今の給料よりも高い金額を提示してくれます。
もしなかったら、そのときは転職をしなければ良いのです。
業界・職種/業種専門の転職エージェントや転職サイトとは、たとえば「IT業界に特化した転職サービス」「広告業界に特化した転職サービス」「看護師・保育士・介護などの転職サービス」など様々です。
業界特化型の転職サービスや、特定業界に強い転職サービスは、兄弟サイト「IKIKATA Database」のTOPページで掲載しています。
どんな経験・キャリアであっても、それを評価してくれる職場は必ず存在します。
もちろん、経験・スキルによって大幅に求人の見つかりやすさや条件は変化しますが、「今の職場に不満を感じている」のであれば、転職活動を始めてみるべきですよね。
3 転職しても給料は下がらない
「転職すると給料が下がる」と何となく悪いイメージを持っている方はいないでしょうか?
それはあくまでリストラなどが行われた過去の話です。今でもリストラの危険性がまったくないわけではないですが、自発的におこなう転職活動で給料が下がることはありません。
それはなぜかといいますと、最初に給与条件を検索できる転職サイトや、給与条件を代わりに交渉してくれる転職エージェントは無数に存在するからです。
特に、あなたの代わりに給与交渉をおこなってくれる転職エージェントに依頼することで、年収アップが可能です。
年収アップ転職をしたいと考えているなら、下記に掲載されている転職エージェントのうち、特に自分に会っていそうなものを順位1位から見てみることをおすすめします。
また、実際に今のあなたの職種・業種の求人が一般的にどの程度の年収なのかを調べることも大切です。そんな方は転職サイトに登録し、職種/業種の条件から求人を探してみることをおすすめします。
おすすめ記事:おすすめ転職サイトランキング!選び方や登録後の流れ、活用法まとめ
4 新しい環境と今の環境の比較はカンタンにできる
転職活動自体はスタートでしかなく、本当に大切なのは「実際に内定をもらい入社したあとに後悔しないか?」という不安を解消することですよね。
「こんな職場に転職するくらいなら、以前の職場にいたほうが良かった…」という後悔をしたくない方は、転職活動に後ろ向きなはずです。
しかし、今の職場に不満を持っている方こそ、転職エージェントを使うべきです。
それはなぜかといいますと、転職エージェントでは応募先企業の内情や上司の情報、会社の雰囲気や残業時間の実態などについて詳しく教えてくれるからです。
あなたは、今の職場に不満を感じているからこそ、「転職先の内情」をしっかり知ったうえで転職したいと考えているのではないでしょうか?
実際に転職するかどうかは置いておいて、今の職場をほかの職場と比較してみることで、あなたが本当に満足できる仕事を見つけることができるでしょう。
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