今回は、学生団体「TED×Tohoku」、学生キャリア支援組織「En-courage<エンカレッジ>」東北支部元代表、「国際交流プログラムPBL」での2度の海外経験、学生起業と、学生ができる最大限のことをすべて経験してきた東北大学生、作増志郎さんにインタビュー。
本記事では、地方学生のロールモデルとして作増さんをご紹介。「留学を考えている学生」「学生団体で活躍する(したい)学生」「起業したい学生」必見の「学生が知るべきスキルアップ」の方法論を語ってもらいました。
Contens
これまでの経歴・経験
—ネクストアクションはさらなる「海外でのキャリアを積むこと」である作増さん。冒頭で述べたように、これまで「学生のうちにできること」を最大限実行してきた学生といえます。
これからの時代、学生のうちからできることはもっと増えていきます。「大学へ進学する意味」が急激に変化している現代社会で、積むべき経験とはどのようなものでしょうか。
「留学」「学生団体での活動」「就活・インターン」…枚挙にいとまがありませんが、「学べること」「学びたいこと」を明確にすることと、行動することを同時にしなければならないことを、作増さんのお話から知ることができます。
「TED×Tohoku」での失敗 〜自分が「直すべき」部分を見つめるキッカケ〜
—作増さんの学生団体としての最初の活動は、「TED×Tohoku」から始まりました。
「TED×Tohoku」は、「東北を創る人を増やす」という団体理念を持つ組織。表面化されていない東北の「広めるべきアイディア」を発掘するためのイベントの開催や、動画による情報発信を行う組織です。
「東北の優秀な学生が集まっている組織なので、(求められる)基準が高かったんです。集まっている人たちの100段階くらい下のレベルにいた自分が、その高いレベルで仕事をすることになりました。組織の中でいろいろなことを学んで、任せてもらえるようになっていきましたね。」
—しかし、その頃の彼は「団体の中で仕事をすること」をきちんと理解していませんでした。
「イベントを控えているのに『インターンのほうが大事です』みたいな。当然、そのときの代表の方には怒られまして。…それは当然で、そのときは任されていた仕事も全然できていなくて。」
できるのは、「コピーをとる」といった簡単な仕事だけ。寝坊といった惨めな失敗や、熱意のなさに起因する失敗は、”自分自身を見つめなおす経験”になった、と作増さんは語ります。
「イベント本番前のリハーサルで寝坊し、本番も寝坊し…と、”ごみくず”だったんですよね。そういった(組織内での)一連の経験があったからこそ、『根本的な部分や姿勢・態度を直していかないとダメだな』と、やっと気づくことができたんです。」
—その場で自分の力量のなさに嘆くだけではなく、しっかり「どの部分を直すべきか?」「当たり前の基準をあげるためには?」を考えていく。社会経験のない学生のうちから、冷静な視点を持つことが重要です。
「東北大学PBLプログラム」への二度の参加 〜できないことを克服することはできるか〜
—「東北大学PBLプログラム」は、海外で「PBL(課題解決型)フィールドワーク」を行うプログラム。一度目は参加者、そして二度目は「リーダー」としてプログラムに参加したことで、「TED×Tohoku」での失敗を乗り越えることができたと作増さんは語ります。
「以前属していた組織では仕事ができていなかったわけですから、信頼がまったくありませんでした。『自分の”価値”を発揮することができない』ということを、そこで痛感したんですよ。PBLでスキルアップできたことで、『時間をかけて準備すれば、できなかったこともできるようになるんだ』ということを実感することができましたね。」
—二度目のPBL参加でプログラムのリーダーを務めつつも、彼はTED×Tohokuのメンバーや、新しいメンバーとともに「TOHOKU HACKATHON」によるアイデアソンとハッカソンを開催しました。そのイベント開催に当たって、「今までやったことを活かそう」と、組織における仕事をどんどんやっていったと言います。
「リーダーなので、『今までやってきたことを活かさなきゃいけない』と、バンバン仕事したんです。自分の上の立場のリーダーにも、(組織の)マネジメントに関してめっちゃ意見を言う…みたいな。それだけではなくて、細かい仕事も全部自分でやろうと。組織のマネジメントのために、メンバーの動きをスプレッドシートに記入してまとめる作業なども含めて、全部自分でやりましたね。」
—リーダーとしてだけではなく「マネジャー」としての役割を果たすことで、「ロジカルに発言する」要諦を得た彼は、帰国後起業に向けて動き出します。
「株式会社Earther」の起業 〜「起業」は手段か、目的か〜
—「ハッカソンを開催した後、Webサービスを作りたいと思うようになった」と語る作増さん。帰国後すぐに、「自分のアイディア」を話すため、様々な経営者のもとに会いに行ったと言います。
「でも当然、そのときはサービスを作ってすらいなかったわけで『まずは作ってみないと分からない』と。なので、『実際にプロトタイプを作る』ために起業を考えたんです。」
—起業という選択肢は学生にとっても社会人にとっても「大きな決断」です。起業という選択肢は、彼にとって手段か、それとも目的か。彼は「その問い自体がナンセンス」と答えます。
「起業するという行為自体が、目的でもあって、手段でもあると自分は考えています。よって、その問い自体がナンセンスだと思います。現実的には、もちろん『手段』として起業すべきなんですが、それを人に『問いただす』必要はまったくないんです。自分は最初から『起業』という選択肢が頭から離れなかっただけでした。」
—両親が会社を経営していたことで、「起業する」ことは手段でも目的でもなかったと言います。「やりたいこと」が明確な学生にとって、起業は手段でもあり、また目的でもある。起業を選択肢のひとつとして考える際には、「手段か目的か」という区別は、必要のない考え方かもしれません。
「En-courage<エンカレッジ>東北支部」〜「サーバントリーダーシップ」〜
—「En-courage<エンカレッジ>」は、全国規模で学生のキャリア支援事業を行っている組織。その東北支部立上げを担ったのは作増さんでした。
これまで実践してきたリーダーシップやマネジメントを駆使すべき「組織の設立と運営」に際し、まずメンバー集めから始めていった彼は、とある壁にぶつかります。それは「メンバーの離脱」でした。
「(エンカレッジ東北支部の)イベントを開催するにあたって、メンバーを集めることから始めて、11人のメンバーを集めることができました。しかし、そのほとんどが途中で辞めてしまったんです。当時の組織の環境には、メンバーにも、そして自分自身にも『不満』がたまっていたと思います。『ふざけんな』とみんなが思っている状態でした。」
—自分のリーダーシップでは、組織が続かない。そう痛感したのは、あるメンバーの一言でした。
「メンバーの中に、一度辞めた後、もう一度参画してもらった方がいたんです。その人が言うには『部下の性格や気持ち、キャパシティ、状況を考えて仕事を振れ』と。リーダーシップはあるけれども、メンバーそれぞれの性格や気持ちといったものを考えないと、組織運営はできないということを言われたんです。」
—自分本位のリーダーシップでは、人はついてこない。自分はメンバーを信頼していると思っていても、メンバー個々人からしてみれば、「信頼されていない」と感じる。なのに、仕事だけが降ってくる。そんな状態では、組織は続きません。
「自分の『リーダーシップスタイル』が間違っていた、ということだと思います。環境に合わせたスタイルがリーダーには必要で、特に学生に対しては『サーバントリーダー』であるべきだったと。」
—起業や学生団体での活動を経て、「マネジメントする」ことの難しさを知る。
自分自身の失敗を克服し、それを組織に当てはめようとした結果、また「壁」にぶつかる。そういった経験を経て、作増さんはさらに自身の「スキル」を伸ばす方向へと舵を切っていきます。