社会ではたらき、自己実現や社会貢献のビジョンを描くこと、そして、実践に向けた努力を行うことが重要であるのは、皆さんも周知のことと思います。
その際には積極的な挑戦のための準備を入念に行います。誰でも「ゼロからのスタート」。準備をしないことには、「結果」を出すこともできません。それは若手のビジネスパーソンでも、学生でも同様です。
しかし、チャレンジングなことを多くしていると、つい忘れてしまうのが「リスクマネジメント」。これらは単に「注意しておく」「心にとどめておく」という漠然とした気持ち程度の概念ではありません。確立しているプロセスと方法があります。
今回は、「リスクマネジメント」の意味と「なぜ必要なのか?」、そしてその方法をご紹介していきます。
Contens
今回のゴール
・リスクマネジメントの意味と必要性を知る
・リスクマネジメントとクライシスマネジメントの違いを知る
・リスクマネジメントのプロセスと、日常で回すべきPDCAサイクルを知る
リスクマネジメントはなぜ必要なのか?
「リスクマネジメント」とは、「ある組織がリスクを念頭においた決断と価値の最大化を図るための管理手法」のことです。私たちはどんなシゴトする場合でも未来の「リスク」を想定して行動するべきです。
しかし、すでに今、何らかの問題に対処している最中であったり、しっかりとした「リスクへの対応」を考えていなければ、実際にリスクに遭遇したときに「予想していながらリスクを受ける」ことになりかねません。
たとえば、あなたがあるプロジェクト遂行のためにリーダーを務めることになった場合、チーム全体のゴールの設定やチームマネジメントをするとともに、未来に想定されるリスクはどういったものか?を考えなければ、具体案も出ませんし、目標達成の際の指標を次に生かす際に「改善点」が見いだせないまま終わる、ということも考えられるでしょう。
そしてそれは「人生」という大きなテーマに関しても同じです。「人生自体」には何の意味もありません。自分で目標や目的を創っていくもので、「はたらくこと」もその延長線上にあります。そして、人生の目的や目標を設定することと同様に、未来に待ち構えるリスクに対して、確立した方法でリスクマネジメントをすることが重要です。
リスクマネジメントは、組織や団体、チームにだけ必要なものではなく、「すべての人に」必要なことなのです。では、具体的に「リスクマネジメント」をどう実践していくべきかを考えていきましょう。
リスクマネジメント実践編
(1)「リスク」と「危機」の違いを明確にする
リスクマネジメントの前提として、「リスク」と「リスクではないもの」の峻別が必要です。この「リスクではないもの」とは「危機管理」のことです。「クライシスマネジメント」と言い換えることもできます。
クライシスとリスクは、似ている概念ですが、その意味するところはまったくといってよいほど異なります。下記の図を見てみましょう。
クライシスマネジメントは、何かの危機が訪れた場合に、その被害を最小限に抑え、その回復までの管理を指します。「災害時の救援活動」などがそれに当てはまるでしょう。
対して、リスクマネジメントは、災害でいうところの「災害対策」のための組織づくり、法整備など「まだ発生していないタイミング」での管理を指します。
要するに、クライシスマネジメントはその場でなるべく被害を抑えること、リスクマネジメントは被害が発生しないように準備すること、と言い換えることができます。
私たちはあるものごとに対し、「リスクがあるかないか?」をしっかりと考えられていると思いがちです。しかし、それでは「危機管理」ではあっても「リスクマネジメント」ではありません。何をリスクマネジメントの具体案とするかは経験や思考が重要です。
ポイントは「『リスク』が発生した場合ではなく『リスク』が起こらないようにする」という発想の転換です。あなたがもし、「このリスクは重過ぎる」や「このリスクには対応できる手段がないからやめておこう」と判断し、ものごとの計画を白紙に戻しているのなら、それは「損失」になります。
「リスクマネジメント」は、リスクに対して逃げるための手法ではなく、「リスクを取るための準備」であるということができます。よって、リスクマネジメントは、クライシスマネジメントすらも含む大きな概念なのです。
(2)「リスクマネジメントのプロセス」を実践する
「リスクマネジメント」は、「リスクを取るための準備」です。そしてその準備のためには、ある一定のプロセスが重要です。下記、そのプロセスについてご説明します。
リスクマネジメントのプロセス
1.リスク分析
「リスクの原因は何か?」「リスクがもたらす被害は何か?」をはっきりさせます。原因をつかむことができただけでは解決することは困難ですし、また、そもそも解決できる問題かどうかも分かりません。しかし、重要なのは、「リスクの仕組み」を分析しておくことです。仕組みを知ることで原因を芋づる式に探ることができます。
重要なのは「不安のタネ」をはっきりとさせておくことです。
2.リスクアセスメント
ここで「リスクが発生した場合」を考えます。リスクが実際に発生し「危機」が訪れた場合のコストと結果を分析します。分析手法には多くの方法がありますが、経済的なものと発生する状況を考えることは、それほど難しいことではないはずです。
リスクアセスメントは、「具体的にどうリスキーなのか?」を分析することです。
3.リスクファイナンス
組織のリスクファイナンスは、主に「危機」が発生した場合の経済的損失に備えた保険の加入のことを指します。ただし、これは「危機」に関して必ず準備しておくものの一つですので、あえて解説する必要はありません。
ここで重要なのは「経済的損失」への解決策を得られたからといって、「やめる理由」にも「やる理由」にもならないという点です。「お金がない」というところからくる判断は現実的に人の判断基準となってきますが、その際でも「お金をかけずにやる方法」は別に考えなくてはなりません。
リスクファイナンスはあくまでも「経済的要因」を「区別する」作業になります。
4.PDCAサイクル
PDCAサイクルとは…「Plan→Do→Check→Action」を繰り返して計画から改善を繰り返すサイクルのことを指します。1~3までは「実際にそのリスクが発生して『危機』が訪れた場合」を分析してきましたが、ここでは主として「リスクを発生させないようにする」ことをメインに解説していきます。
リスクは、ものごとの状況にもよりますが、「小さな問題」がキッカケとなり「大きな問題」へと発生することがほとんどです。「これが起こってしまってはどうしようもない」という大きな危機的状況も、元をたどれば「小さな問題」に起因することがたくさんあります。
ですから、この「PDCAサイクル」は一つのものごとに関してのみ応用することではなく、日常全般において常にしておくべきことなのです。日常の一つ一つで積み重なった「悪い部分」が、後々の大きなプロジェクトに大きな禍根を残すことになります。
「大きな失敗」を予防するためには、「日常のシゴトとタスク」において常に自分の改善点を見出す努力が必要です。
大きなプロジェクト、絶対に失敗したくないことはたくさんありますから、その大きなものごと一つ一つをこなしていくうちにこのサイクルを回す余裕はありませんよね。ですから、他の小さな部分でそのサイクルを回していくことが重要なのです。
まとめ:リスクを取ることは「チャレンジすること」である
ここまで、リスクとリスクマネジメント、そしてそのプロセスを紹介しました。日常のどんなものごとにおいても、冷静な視点をもって自らのリスクを管理する思考が重要です。
また、「危機的な状況に陥らないようにしよう」と思い、何かを避けて通りたいと思う気持ちは誰にでもあります。しかし、それらリスクから目を背けずに分析的にものごとを見つめなおすチャレンジが必要なのです。
もしあなたが何か不安を抱え、「やろうとしていること」に一歩を踏めないでいるのであれば、一度足を止めて、リスクマネジメントのプロセスをたどってみてください。それはきっと、今後の組織運営やチームとの協働においても役立つはずです。