「なぜなぜ分析」を活用すれば、あなたのシゴトや生活の現状を改善ための行動を起こすことができます。
「なぜなぜ分析」は、特に生産現場での問題解決のために使われた論理的解決法です。しかし、その「なぜ?」から始まる思考法は、生産現場だけではなく様々なビジネス、生活上の課題に活用できる応用性の高いものです。
やり方は、「なぜ?」を繰り返し、問題・課題となってることの「根本原因を探る」というものです。「なぜなぜ分析」を活用すれば、効率的に問題解決を行うことができます。しかし、問題解決手法として万能なわけではありません。
そこで今回は、「なぜなぜ思考」の活用法と具体例、そして活用する際のポイントをご紹介します。ビジネス上の現状を改善したいビジネスパーソンや、今の状況から脱却したいと考えている方は、ぜひ実践してみましょう。
Contens
「なぜなぜ分析」とは?
「なぜなぜ分析」とは、あるできごとや問題の”原因”導くための分析手法です。
「なぜ?」を繰り返すことで、最初に思い浮かんだ原因ではなく、”根本の原因”までを考えて現状を解決することができます。
次回以降に同じ失敗を繰り返さないようにする考え方、「再発防止」という言葉は、ところどころで耳にするものでしょう。誰でも失敗を繰り返したいとは思わないはずです。同じことを二度と繰り返さないようにするために「なぜなぜ分析」は用いられます。
「なぜなぜ分析」の具体例
たとえば、発生した課題として「納品物の期限が間に合わなかった」を挙げると
「なぜ期限に間に合わなかったのか?」が1段階目の「なぜ」になります。
そして、ここで2つの原因が考えられます。
→「納品期限までの計画に余裕がなかった」
→「納品する前の最終チェックに時間がかかった」
ここで、2段階目の「なぜ」が分かります。
「なぜ、納品するまでの計画に余裕がなかったのか」
→「計画策定の段階で現場の他の作業に要する時間を共有していなかった」「なぜ納品する前の最終チェックに時間がかかったのか」
→「チェック項目を事前に把握しておらず、情報の共有がされていなかった」
3段階目は
「なぜ、計画策定の~共有されていなかったのか」
→「現場の状況を把握する監督者を配置していなかったから」「なぜ、チェック項目を~共有がされていなかったのか」
→「チェック項目を担当者に共有する仕組みがなかったから」
になります。
4段階目では、3段階目で具体的にした2つの原因のうち、2つとも仕組みづくりの不備が挙げられています。この段階で、最終的にどんな対策を講じればいいのかを把握することができますね。
このように、1つの「なぜ?」から2つ以上の原因を把握することができるために、現状を改善するために必要な条件を見出して、それぞれに対策を講じることができる点で、「なぜなぜ分析」は重要です。
もちろん、問題解決の手法として、この「なぜなぜ分析」は万能なものではありません。「全く新しいことを考える」「人の意識を変える」という意味では、組織にも、個人にも影響を与えることは難しいし、限界もあるでしょう。
しかし、「現状を分析し、論理的帰結として発生した原因を探る」一番の方法として、この「なぜなぜ分析」は一役買ってくれます。
では最後に、「なぜなぜ分析」をする際の注意点についてご紹介していきます。
「なぜなぜ分析」の注意点
「なぜなぜ分析を使ったのに、またもや同じ失敗をしてしまった…」という場合、その分析の仕方は間違っていた可能性があります。分析手法も、うまく使わなければ活用したとはいえません。
それは、「なぜなぜ分析」でなくとも、様々な思考ツールやフレームワークに共通することと言えるですが、今回は「なぜなぜ分析」を活用する際に気をつけるべきポイントをご紹介していきます。
(1)「個人」ではなく「仕組み(システム)」に目を向けること
「なぜ?」という問いは、慣れていることのようで実はそれほど慣れている思考ではありません。「どうしてだろう?」と考えることは誰にでもありますが、現状を変えるためにおこなう分析としての「なぜ?」は、親しみのないものであるといえるでしょう。
「なぜなぜ分析」をおこなうにあたって、最も安易な形として陥りやすいのが「個人に責任や原因を負わせること」です。先ほどの例にしても、「なぜ?」の途中で、「計画を策定したメンバーの一人が優柔不断だったから」という原因をつくることは可能です。
しかし、そういった思考に陥ってしまうと、仕組みを変えるどころか、「個人の考え」に原因を負わせる考え方に繋がってしまいます。
ヒューマンエラーは必ずあるものであり、それを認識したうえで「その失敗をどのくらいカバーできる仕組みを創れるか」ということが最も重要なことです。
(2)「意識の変革」ではなく「行動」に目を向けること
「組織文化」やチームのまとまりを創るためには、メンバーや所属する社員、組織の人々の「意識改革」が必要な場合があります。意識改革は、組織として経過した時間が短い組織であればあるほど、必要です。
初期メンバーばかりの組織のころとは違い、新しいメンバーを入れなければ人的リソースが足りない状況になることは、ベンチャーやスタートアップの宿命です。
また、今改善すべき問題を抱えている組織は、「これから先」を見据え、自らのビジョンに向かって真っすぐ進む能力のある組織であるといえます。
しかし、意識だけではなく、今の状況を改善するためには「仕組み」をどれほど盤石に築けるかどうか、というところも重要です。メンバーが少ないうちは、特にそういった仕組みよりも属人的な部分が大きいところもありますが、その時期を耐えつつも、組織の先を見据えた仕組みづくりをするために、現状を改善する「行動」を見据えた分析をしましょう。
「なぜ?」と問うて、「メンバーの意識が足りないからだ!」という風に言うこともできますし、また、「メンバーの意識を向上させるためにはどうすればいいのか?」と考えることは重要です。しかし、それとは別に、今の状態で組織の仕組みからどう改善できるのかを考える必要もあります。
また、個人の現状改善のために「なぜ?」と考える場合も、ただ単に「自分の考えが甘かったから」「自分に能力が足りなかったから」というものでは行動に結びつくことはありません。また、意識を変えることも難しいでしょう。
大切なのは、「現状を改善するために、何をすべきか?」を「なぜ?」を繰り返した後に解決策として導き出すことです。
(3)「なぜ?」は一本道ではないということ
例でも示したように、一つの例から一つの原因だけを見つけるという安易な「なぜなぜ」は危険であることは間違いありません。
なぜなぜ分析の元祖は、「トヨタ生産方式」というものになりますが、その考え方では、一つの「なぜ?」に対して複数の原因をあぶり出し、「もれなく、だぶりなく」の手法がおこなわれています。このように、安易な「一つの出来事は、一つの原因から生じる」という意識は、結局現状の改善に繋がらない可能性が大きいのです。
「なぜ?」から出る帰結は一つではないこと。一つ目に、「目に見えて改善できそうなことが出た」からと言って思考と分析を止めず、クリティカルに現状を見据える考え方が重要です。
目安として、「すごく改善したい問題がある」場合に、その「なぜ?」の結果として1つ、あるいは2つ程度しか「原因」が出てこない場合は要注意です。これだけ組織やわが身を悩ませる課題ですから、見落としている論理的な帰結が存在するでしょう。
現状を改善するための思考
今回は、「なぜなぜ分析」の説明と具体例、活用するときの注意点についてご紹介してきました。
「なぜなぜ分析」は、記事中で何度も触れている通り、万能な分析手法ではありません。「なぜ?」という分析は、現状を分析してその改善のための行動をとるためのツールです。つまり、現状に問題がない、あるいは原因が現状にはない場合の問題解決にはなりません。
しかし、現状に問題を抱えたまま行動することには常に大きなリスクを伴います。そのリスクを考えるうえでも、「なぜなぜ分析」は有効なのではないでしょうか。
思考枠組みの一つとして、「なぜなぜ分析」を知り、活用することには大きなメリットがあります。ぜひ実践してみてくださいね。
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