今回は、学生モデルのキャスティングとイベント・商品開発という独自の事業を運営する「株式会社epi&company」代表、松橋穂波さんのIKIKATA。
震災を通して「女性の美しさ」「健康」に気づいた松橋さんは、学生団体「東北女子学生コミュニティepi」を設立し、「女性のロールモデル」を世に広める事業を東北で展開してきました。その後法人化し、事業内容も多角化しています。
今回は、そんな松橋さんの働き方、そして生き方に迫ります。女性として、経営者として、松橋さんの言葉から学べることをふんだんに盛り込んだ内容になっています。
具体的な業務
「株式会社epi&company」の代表取締役としてシゴトをしています。
業務の内容としては、企業様とのタイアップが主となっていて、商品開発・イベント企画などに携わっています。企業様に対して、たとえば女性誘客のためのイベント企画を提案したり、既にある商品に対して一般女性から消費者目線での意見の提案をしたりと、その業務は様々です。
学生コミュニティと提携し、そこの女の子と一緒にプロジェクトを立ち上げ、アイディアを出して、それを商品開発や企画に活用していくといったやり方もします。マーケティングの知識はないけれど、一般的な女性の目線から意見を出すという事業は、企業様にとって「消費者目線」や「新しい視点」となり、開発に役立ちます。
そのほか、学生モデルのキャスティングや、商品のプロモーションにも携わっています。イベント・商品企画の提案やキャスティング、現場のフォローまで行う…という事業ですね。
たとえば、楽天球団で「女子2千円シート」があったのですが、女性の認知度が低いという課題がありまして、そこで女性に対するプロモーションを行ったこともあります。「シートで女子会!」みたいな。
キャスティングするモデルは「学生モデル」が多く、読者モデル的な感覚です。「等身大の学生らしさ」を出したモデルとして活動して頂いているんです。
—「モデル」というと、どうしても敷居が高い感覚を抱いてしまいます!学生モデルをスカウトするときの基準はありますか?
現在はスカウトはあまり行っていなく、公募をかけています。体型や身長に関しては、特に厳しい基準は設けていなくて。ただ、「人間性」を重要視していますね。
「ロールモデル」という言葉がありますよね。東北の女性が憧れる「モデル」であるように、「あの子頑張っているよね、応援したいな」「あの人憧れなんです!」」と言われるようなモデルさんと一緒にシゴトをしたいなあ、と思います。
モデルとして採用する際の面談でも、そのような人として当てはまるかどうか、というところを見ていますね。
—なるほど、見た目だけではなくて「ロールモデル」として活動できるような人物を基準としているわけですね。
人として当たり前のこと、挨拶、マナー、そして時間管理。そういった部分ができているかが重要ですよね。最初はできなくても、私たちと働くうちに身に着けることができるようになってほしいという思いも、もちろんありますし。
私がモデルの方のゴールとして描いているのは、「モデル外の分野でも活躍できるような人材になってもらう」ということなので。
—モデルの方を集めるためには、どういったことをされてきましたか?
そうですね。学生団体として活動していた初期のころは、一人ずつ道で声をかけていました(笑)
今は「epi」の認知度も上がってきているので、公募制にしていますけど、認知度が低くモデルさんがなかなか集まらない時期は「こんなことがしたいんです!あなたのチカラがないとできないんです!」と口説いていましたね(笑)
—「epi」には、学生コミュニティとしての「epi」と株式会社としての「epi」がありますよね。この二つの組織の内訳は、どのようになっているのでしょうか?
私が代表として活動しているのは「株式会社epi&company」なんです。もともと大学時代にサークルとして活動してましたが、私個人は個人事業主として1年半ほどシゴトをしていました。
モデルの所属は「東北女子学生コミュニティepi」というカタチになっていまして、「株式会社epi&company」ではクライアントとのやり取り、その他「会社」としての業務の受け皿として活動しています。
もちろん、具体的なところは学生コミュニティの代表の方にも協力して頂いたり、アルバイトの方を雇ったりしていますが、会社の人間として活動しているのは私一人、ということになりますね。
—会社には、モデルの方以外にも、たとえばデザイナーさんなどはいらっしゃいますか?
「epi」ではフリーペーパー「Bealthy(ベルシー)」を出していまして、東北6県120校以上の高校や大学に設置させて頂いているんです。プロではありませんけど、記事を執筆するライターとデザイナーの方にも「チャレンジ」の意味も込めてやってもらっています。
—今後、「epi」ではどのような活動を展開していく予定でしょうか?
学生の間での認知度が以前よりも高まってきました。まず今年1年は学生の間で有名な「epi」にしていきたいですね。どうしても宮城県中心の活動となってしまっていますが、今後は他県での活動も増やしていきたいと思っています。
もちろん、新規事業を展開していくことも視野に入れています。
今の仕事に就いた経緯・キッカケ
震災での経験、父の死
私は、実は震災で父親を亡くしているんです。その経験があって、「明日死んだらどうしよう」と考えたときに「明日死んでも後悔がないようにしたい」と強く思いました。
もし、明日死んでしまうことになっても、「やりたいことがやれていたな」と思えるようにしたい、と思ったんです。
大学1年生のとき、凄く堕落した生活をしていて、「父親に恥ずかしいな」と思うようになりました。周りの環境に流されて生きている自分が恥ずかしいなと。
「美しさ」と「健康」の大切さに気付く
震災後、学費に困っていたこともあって、ある奨学金に応募したんですね。その奨学金というのは、カナダからの奨学金だったんです。その奨学金の授与式のとき、自分へある包みが渡されたんですが、中身はなんと化粧品だったんですよ。
女性は「おしゃれしたい」「化粧がしたい」という思いがもちろんありますが、震災直後はそういった思いを置いて、生きるために必要なものを手に入れていくことが先決だという雰囲気でした。「化粧なんてしちゃダメ」 そんな空気感が流れていたんですね。
震災の復旧が終わって、「復興」が始まるとき、まずは被災者が元気じゃないとだめだなと思いまして、その中で、特に「おしゃれをすること」が女性にとって大切なことだよなと考えたんです。
「女性の美」そういうところから、東北全体を元気にしたい、そう思いました。
また、心身の健康が損なわれている状態では、当然おしゃれはできません。なので、そういった部分も含めて活動していきたいとも考えました。「美しさ」と「健康」その2つをテーマに活動したいと思ったんです。
学生団体としての活動
そんな経験があってから、「美しさ」と「健康」の2つのテーマで活動していこうと思ったのはいいものの…まだ学生ですから、どうしたらいいのか最初は分かりませんでした。
でもそこで、「東北の女性を元気にするにはどうすればいいか?」を考えたとき、まずは自分の身の回りの学生からムーブメントを起こそうと考えたんです。
—その後は、今と同じ活動を展開していったのでしょうか?
最初から今の状態として固まっていたわけではなくて、「とりあえずなんかやろう!」と(笑)「~~について活動する会を作りましょう」みたいなのって「固い」と思ってました。
押し付けではないやり方で「健康と美」をみんなに感じてほしいと思ったときに、「フランクなやり方がいいな」と思ったんです。学生も興味が持てて、共感が得られるもの…
そこで思いついたのが「ファッションショー」で。「美と健康」をテーマにしたものを開催しようとなったんですね。
でも、2年間ファッションショーを開催した後、自分が本当にやりたかったのはファッションショー自体ではなく、「美しくて魅力的な女性をつくる」ということだった、ということに気づきました。
あくまでも、ファッションショーは「ツール」に過ぎなかったので。
「美しい女性」は「自信のある女性」だと考えています。女性は努力すれば、誰でもきれいになれる。見た目の美しさは重要で、それを入口に外見の自信を得て、それが内面の美しさにも結び付くんですよ。
たとえば「あきらめていたミニスカートがはける!」とか、そういうこと一つとっても「自分のできなかったことができるようになる」ということは自信につながります。
そういうのって、その人の美しさを加速させるものになるんですよね。そしてそれがぐるぐるサイクルとしてまわるんです。「美しさ=自信」になるんですよ。
地方学生の能力
外見の美しさを高めていくことに対するアプローチとして、内面の美しさ(=自信)というものが重要になってきます。
内面の自信は成功体験の積み重ねだと考えているのですが、その成功体験の積み重ねができる場が東北には少ないことに気づきました。自分で何か新しいことを生み出せる学生はいいのですが、そういう学生はほんの一握りです。
地方の学生が衝撃を受けるのが首都圏との学生の活動の規模感や質の違いです。そこで地方学生が勘違いしてしまうのは、自分たちは大したことない、と思ってしまうことです。決してそんなことはなくて、単純にそういう経験の場がない、という機会の差だけなのです。
そもそも、地方学生には内面の美しさを高められるような情報が少ない。そうであれば、東北でそういう場を作らなければならない、そう思うんです。
学生たちのキャリアは大事で、だからこそコミュニティを通した企業タイアップで学生に様々なことに携わってもらう。それを通して社会を知ってもらい、たくさん勉強してもらいたいな、と思っています。