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「就活の長期化」を考える
学生は就活が始まる前から少しずつ「社会に出ること」を意識し始めます。
そして、社会に出て、「働く」ために、自己分析や面接対策など、就職活動の「ための」スキルを習得することに、大学生活の後半部分を費やします。
この問題を「就活の長期化」と呼びます。
そして、この「就活の長期化」問題に対しては、懸念と肯定の意見がどちらも存在していますね。
「大学での学び」vs「就活における成長」
このような構図ができあがる中で、学生を取り巻く状況を危惧する論調があり、その一方で、「就活の方が、大学での学びよりも成長できる機会が多くある」という論調もあります。
しかし、この構図のうえでしか、学生の「就活事情」は語られないことがほとんどです。
今回は、「学生の視点」=「学生が社会に出る前に志向する『成長』自体の定義は何なのか」というポイントから、学生の就活事情を分析していきます。
果たして、学生に求められているものは何なのか。そして、学生が求めるべきものは何なのか。
一緒に考えていきましょう。
改めて問い直す、「成長」とは。
さて、「就活→社会に出る」という一般的なプロセスにおいては、学生各人がそれぞれの自己実現のために「成長」しようとしている、ということは言うまでもありません。
しかし、その成長の定義自体が、世の中で「成長する」「成長できる」などと多用されているうちに、曖昧になってきているのではないでしょうか?
ここで改めて「成長」の定義を再確認してみましょう。
「成長」とは…
①「(人・動植物が)育って,大きくなること。一人前に成熟すること。大人になること。」
②「物事の規模が発展して大きくなること。」
と定義されています。(引用:「大辞林」 第三版)
そして、「学生」における「成長」とは「社会からの要望」と「自分の理想」の組み合わさったアイディアの実現のために必要な思考法・スキルを厳選し、身に着けていくことです。
なぜ、その結論に至るのか?それは、「企業が求めている人材」を改めて見てみることで理解できます。
「企業が求めている人材」を知る
Jobweb就活コラム-「企業が求める人材とは、どんなひと?」に挙げられているのは、最近の大企業が「求めている人材とはどんな人か?」という情報です。
当引用記事中では、「自分でものを考えられる力」が必要である、と説明しています。
また、PRESIDENT Online-「人事部の告白!有力企業が欲しい人材『6つの能力』」では、企業が求めるポテンシャル採用を大きく6つに分類しています。
(2)チームワーク力(共感力、チーム志向)
(3)コミュニケーション力(論理的思考、伝える力)
(4)リーダーシップ力(周囲を巻き込む力、主導力)
(5)主体的行動力(自律的アクティビィティ、やりぬく力)
(6)グローバル素養(異文化受容力、語学力)
これら(1)~(6)のスキルは、別々の能力として捉えられることが多いですね。しかし、よく考えてみると、これら6つのスキルの根底を支えるものは全て「自己実現と社会からの人材的なニーズ」に答えようとする結果、得ることができる具体的なスキルであるといえます。
よって、学生が社会に進出する際に志向する「成長」とは、「自分でものを考える力」+「6つの具体的スキル」=自己と社会を組み合わせたアイディアという図式で表すことができるのです。
そして、先ほど述べた「成長」の定義と照らし合わせるのならば、「大人になること」の最大限の結果が、上記の図式なのです。
「大学での学び」と「就活における成長」を比較することの危うさ
さて、学生における「成長」とは何か。
その再定義と、図式を表すことは可能です。
しかし、学生における「就活事情」や現状を世の中のメディアや論客が語るとき、そこには概して、最も考えるべきである「学生からの目線」が欠けていることが少なくありません。
記事冒頭でも述べたように、「就活の長期化」という問題を論じる際に「大学での学び」と「就活における成長」を単純な「成長量」-「どの程度役に立つか?」で比較しようとするそんな論調が多く見受けられるのが現状です。
しかし、学生のみならず、人の成長というものは、単純な「成長量」で測ることができないものです。
その人が成長したかどうかは、具体的な場所で初めて分かります。
ですから、ただ単に一方に責任を転嫁したところで、当の学生にとっては何の利益にもならないのです。
一律的な責任の押しつけ…例えば、「大学教育が悪い」、「就活の前倒し傾向が悪い」などですね。
そのような分析と問題提起によって判明した「大学教育の問題点」や「就活の長期化」などの社会問題は、広く認識され、解決されるべき問題です。
しかし、本当に重要なのは、学生が限りある学生生活の中で、どのくらい学び、成長する機会を得ることができるか、ということ。
そして、その機会を提供するべき存在こそ、教育機関であり、キャリア事業である、と言えます。
ですが、それとは別に、学生の一人ひとりが起こすべき行動は明確にしておかなければなりません。
就活に関する論議や情報が錯綜している今こそ、私たちはその状況を逆手に取って自分で未来を志向していく必要があるのです。
就活を控える学生は、どんな行動をするべきか?
この記事を読んでいる学生の皆さんは、「好きなこと」「やりたいこと」が明確になっていますか?
そして、その「好きなこと」「やりたいこと」を仕事にしたいと思っていますか?
この質問に対して、「はい」でも「いいえ」でも問題はありません。
最も重要なことは、「自分の好きなこと」を仕事にしたくても、そうでなくても「明確にしておく」ということの重要性の認識をすることです。
先ほど、「社会から求められている人材」と「自分の理想」を組み合わせたアイディアを実行に移していくことが「成長」であると述べました。
まずは、「自分の理想(好きなこと・やりたいこと・するべきこと)」が、社会の中でどのように形を変え、求められうる「ニーズ」になるかを考えましょう。
業界研究や、具体的なスキルの前に、「自分の理想」を語れるようになること。
世の中は厳しいもので、その理想がズタズタにされることも今後あるでしょう。
しかし、私たちは学生という卵の殻の内側にいる存在であり、外の世界に出て活躍するためには、その殻を破壊していかなければなりません。
その創造的破壊こそが、あらゆることに限界がある学生として最もするべきことであり、それはまた潜在的にやりたいことであるとも言えます。
「好きなこと」を明確にして、社会にぶつけていくこと。
この行程を踏まえれば、きっと「成長」が待っているはずです。
この記事の3つのポイント
・「就活の長期化」問題を学生の視点から捉えなおす
・「成長」とは「社会の要望+自分の理想」
・人の成長というものは単純な「成長量」で測ることができない