「大手企業」と「ベンチャー企業」どちらではたらくべきか?
このような問いは、現代社会の転職者、就職者にとって喫緊の課題であるといえるのではないでしょうか? 学生も、転職を考えるビジネスパーソンも、この二者択一の課題を無視することはできません。
どちらを選ぶかは個人の「働き方や生き方次第…」と言ってしまえばそれまでですが、選ぶ際にはきちんと「大手」と「ベンチャー」の違いを知っておくべきでしょう。なぜなら、違いを理解して初めて、自分にとってどちらが正しい選択なのかを知ることができるからです。
先入観やイメージだけで働き方を決めることを避けるためには、しっかりと理解するべきことであるといえるでしょう。
そこで今回は、「大手とベンチャー」を様々な側面から考察して違いを比較検討していきます。「違い」を明確にし、「大手とベンチャーのどちらを選ぶべきか?」を考える知見を手に入れましょう。
「大手企業」「ベンチャー企業」の特徴は?
「大手企業」の定義は?
「大手企業」と呼ばれる企業は、一般に「資本金3億円以上で従業員が300人以上」であるとされています。これは必ずしも当てはまるわけではありませんが、資本金が多く、従業員数が300人以上である場合は、大手企業であるといえます。
大手企業には、以下のような特徴があります。
1.大きな組織内での協働が求められる
→大規模な予算のプロジェクトに関わることができる2.すでに商品やサービスの知名度がある(ルートセールス)
→新規開拓ではなく、「提案力」を駆使したセールスをおこなう3.内的資源(人材、ノウハウ)が豊富
→すでに社内に蓄積されているノウハウや人的資源を活用し、知識やスキルを身に着けることができる
ベンチャー企業の定義は?
「ベンチャー企業」と呼ばれる企業は、「新技術による革新(イノベーション)を起こす企業」であることが特徴です。大手と同列の概念ではなく、「新技術」によって従来のモノ・サービスの販売方法や製造手法などに革新をもたらす企業を「ベンチャー企業」と一般的に称しています。
「ベンチャー企業」には、以下のような特徴があります。
1.組織が小さいため、個人が担当する業務に幅がある。
→数か月単位で業務内容が変わるため、環境や職務が大幅に変化する場合が多い2.社内の意思決定が速いため、柔軟な対応が求められると同時に幅広い業務をおこなう必要がある。
→責任と環境適応に対する柔軟性が求められる3.自発性、主体性が求められる
→スキルを身に着けたり、人を巻き込むためのパワーが必要である(個々人の意思決定や提案が組織全体へ大きく影響を与える)
さて、「大手企業」と「ベンチャー企業」の特徴をそれぞれご紹介しました。ここまでで大まかに「大手」と「ベンチャー」で業務の仕方や内容をイメージできたのではないでしょうか?
それぞれの特徴を知り、自分がどの方向性で働きたいのかを考えるキッカケをつかむことが大切です。
「中小企業とベンチャー企業」って違うの?
中小企業とベンチャー企業の「明確な違い」を知っているでしょうか?どちらの言葉も同じように使っている方も多いと思いますが、実はまったく違う言葉なのです。
この「中小」と「ベンチャー」の違いを明確にしておかなければ、「大手とベンチャーのどちらを選ぶか?」という選択をする際に、間違った判断をしてしまいかねません。
なぜなら、「ベンチャー企業」というものを十分に分かったうえでキャリアを考えなければ、正しい情報に基づいた判断をすることはできないからです。
キャリアディブロップメントアドバイザー(CDA)として、学生や社会人へのキャリア支援をおこなっている今野奈津子さんは、こう語ります。
「大手企業とベンチャー企業はそもそも「言葉(概念)」として同列には並ばないんです。
大手企業と中小企業という線引きだと、日本においては法的になされている。しかし、「ベンチャー企業」というものは、(ある企業が)『私たちはベンチャー企業である』と宣言してしまえば、ベンチャー企業になってしまいます。
そもそも、ベンチャー企業というのは、厳密に言えば「新技術で従来のモノ・コトをイノベーションしているか」というところが判断基準となります。
だからこそ、「新技術でイノベーション」というところで「IT系」のベンチャーが多いということになる。
この「新技術」というのがキモになっていて、たとえば「大型書店を作りました!」というだけではベンチャーにはならない。「本の売り方を変えました!」ことで初めてベンチャーになるんですね。
そういう前提で考えると、官公庁の請負でシステムを作っているIT企業はベンチャー企業ではなく、あくまでも、大手企業か中小企業のどちらかに分類されることになります。」
参考記事:IKIKATA 今野奈津子 【人材サービス】【CDA】
「ベンチャー企業」とはあくまで新技術をもって従来のモノやコトの販売、製造などの仕組みを「革新」することで定義づけられます。よって、私たちが思っている以上に、ベンチャー企業という分類は、「不明瞭な」ものなのかもしれません。
ただし、「新技術」というのは、これからさらに影響を増していくでしょう。世の中を見渡してみると、「シェアリングエコノミー」「AI」「IoT」「リノベーション」等々、消費社会の中で次々と革新が起き続けていることは確かです。
現実的には「大手」でも「ベンチャー」でも、その組織の中で「自分がどのようにはたらきたいのか?」「どんなことを達成したいのか?」を明確にする必要があるでしょう。
これから先の未来を見据えて、自分のキャリアを築いていくために必要なことは、「働き方」を超えた「生き方」を考えることといっても過言ではありません。
「自分はこの分野でこういうことがしたい!」「現状を変えたい!」というイノベーションにつながる理想を、コミュニケーション力や提案力といった具体的なスキルとともに持ち続けることが重要だといえるのではないでしょうか。