Contens
仕事で工夫していること・考えていること(職業観・ポリシー)
「アート」ではなく「デザイン」である
アートは自己表現や問題提起であり、デザインは問題解決のためのもの。
「先に問題があって、その解決のためにどうするかが大事だ」と考えています。最初のアプローチとして、冷静な分析と、「何が問題なのか?」ということを様々な側面から探っていく。
「UI/UX(ユーザーインターフェイス/ユーザーエクスペリエンス)」のデザインが代表的です。「もっと使いやすく」「もっと見やすく」「もっとわかりやすく」を第一に設計してくことが大切です。
だからこそ、「見ればわかる」インフォグラフィックには、大きな可能性を感じています。
たとえば「トイレのマーク」として使われている、あの人のカタチの絵文字は「ピクトグラム」と言って、インフォグラフィックの分野の一つなんです。
ああいうのは、「グローバル」な視点から見ても「人」それも「男女は別」だと分かりますよね。結果、言葉よりも”ビジュアル”の方が伝わりやすくなります。
ただし、造形がシンプルすぎるがゆえに誤解も生まれやすくなる危険性もあります。
「黒=男性用トイレ」「赤=女性用トイレ」という刷り込みが強い場合、スタイリッシュな建物だったり、景観的な統一感を優先して両方とも黒にしてしまうと、急いでいる時に男性が間違って女性用トイレに入ってしまうなんてことが起こるかもしれません。
それが情報を整理した後に「誤解されないようにどう伝えるか」の部分で、難しいところでもあります。
色々なジャンルの人と関わる大切さ
大学院では、「色々なジャンルの人々と繋がったほうが”自分の可能性”が広がる」ということに気づけましたね。
たとえば母校の芸術系大学のサークル活動って、目的がその活動自体だったので、自分と異なる分野のことに取り組んでいる人達が所属していても、なかなかそれぞれの深い話にならなかったんです。
大学院時代、レビューという自分の研究の中間発表が年に一度あったんですが、他分野の発表や展示を観に行くと、これが凄く面白い。「こんな考え方があるのか!」と。
「アート」は、批判される必要はないんですが、「デザイン」の場合は、自己批判を含め、批判される必要があるんですよ。そうしないと、自分の作ったものの、どこが悪いのかを客観的に知ることができないからです。
中でも、近すぎず遠すぎない分野の人たちは自分が考えているのと同じことを別方向から見ていたりするのでとても勉強になります。
だからこそ、「アート」で地域を考えるという方向性のクリエイターさんとか、そういう方々とは色んな考えをくれるという意味で、一緒にシゴトもしやすいです。
違う考え方を持っているからこそ、その人の声を「セカンドオピニオン」として違う方向から考えることもできます。自分では食あたりだと思っていたら、実は「ガン」だったというレベルのことも、デザインでは有り得ますからね。(笑)
そういった方々とは、「ライバル」や「ビジネスパートナー」という関係性にならなくても「WIN-WIN」の関係性を築くことができるのではないか、と考えています。
大沼さんのような職種・業種に必要なスキル
「何を目的にするのか?」を考えること
分野にもよると思いますが、「創業セミナー」のようなイベントですと、「自分にはプランがある!」という人が、そのプランを創業に持っていくための知識が欲しいという場合にはとてもいい機会になるかと思います。
でも、「起業したい!」を目的に考えている人にとっては、結構息苦しいものなんじゃないかなとなんとなく思います。
大切なのは「何を目的にするのか?」つまり目的を自分なりにじっくりと考えてみることだと思います。
自分は元々「独立したい」という気持ちがあったわけではなくて、自分のデザインが「誰かの役に立っている」ということを実感として持ちたかったんですね。
結果論かもしれませんが、自分の作ったデザインへの評価を、直接お客様と対話することで、良し悪しを含めて実感できると考えて創業しました。
自分がやりたい分野のチカラを伸ばしていく機会はたくさんありますから、「何を目的にするのか?」を考えることは重要なことだと思います。
たとえば、地元大江町では「自然が大好き!」という移住者さんで「自然体験のインストラクター」として活躍されている方もいます。社会には、そういった自分が好きなものを仕事として受け止めてくれる受け皿がちゃんとありますからね。
得意分野は手法の一つとして考える
「学生起業」というやり方もありますし、一回勤めてから開業するやり方もありますけど、やっぱり「務めた経験」があって、開業したほうが後々効率が良いような分野は少なくないと思います。
分野的に全然関係のない職場の経験でいいので。
デザイン事務所は、特に難しいのではないか、と思いますね。経験の引き出しがないと、業務を安定して行っていく上で結構難しい部分はあると思います。
自分の場合、シゴトの結果を点数にしたときに、「75~85点」を安定して出せるようになるための経験や手法がいつのまにか身についていたんですね。
だから、バイトしながらフリーランスでやってきました、という方ももちろんいますが「会社に勤めてから起業、
開業する」ほうが、逆算したときに「スピードが速くなる」と思いますね。
もちろん、「やりたいことをやる」ということが大事です。最終的に「好き」であることを続けるということで。「色々やってきたけど、結局ずっと好きだったこれがいい」という選び方ですね。
「自分はこれが好きだ」と思うものを追い続けることで、それが最終的に仕事の武器になるかもしれないし、逆に仕事にはしたくないかもしれない。それは追い続けなければ判断ができないのかなと思います。
自分も大学4年間はずっと写真を触ってきましたが、数年離れたら驚くほど出来なくなっていました。でも素材として写真を使うのはとても好きです。
それと同じように、「写真」や「グラフィックデザイン」は手法の一つであって、最適な選択肢でないなら固執する必要はない、と考えられるようになったのも、そういった紆余曲折を経験してきたおかげだと思っています。
大沼さんのような職種・業種を目指す方々へのメッセージ
「デザイン」は、継続とセカンドオピニオン
デザインに関していえば、「本当にこのアプローチがベストか?」と問い続けること。
「デザイン」というのは、”好きなもの”だけを作っていくのではなくて、自問自答を繰り返し、「違った視点」つまり「セカンドオピニオン」を受け取りながら、自分の手掛けるデザイン(設計)を見つめなおしていくことが大事です。
人間の伸び方は「階段式」
一つお伝えしたいお話があって。人の受け売りなんですが。
『ワンパンマン』を描いている村田雄介さんが「漫画家になるにはどうすればいいのか?」と聞かれたとき、「近道はない」とおっしゃっていたんですね。
人間の伸び方や、漫画力は右肩上がりではなく、「階段式」だと。
平行線、急上昇、平行線、急上昇の繰り返しですね。学んでいったんスキルが向上して、その後は平行線だったけど色んなものが結びついて突然「解」が見つかって。段階的に「これ、こうなんじゃないか?」という試行錯誤の末に徐々に向上していって、最終的に漫画家になる。
その通りで、自分が進む道は回り道だったり、紆余曲折、試行錯誤の連続。
だけどそれは「階段式で成長している」ということだったのかもしれません。「階段の平たいところ」にいるときに、どれだけもがいたり、好きなことを続けられているのか、というところがすごく重要だと思います。
もちろん、「趣味」として続けるレベルでもいいですし、一点集中型で取り組むのもいいですが、そういう考え方をしてみてもいいのかなと思いますね。
—ありがとうございました!
<「cakes design office」・大沼さんの情報>