今回は山形市職員、後藤好邦さんのIKIKATA。
市職員としてだけではなく、東北まちづくりオフサイトミーティングの運営等、まちづくりにも積極的に関わっている後藤さん。
多くの「繋がり」を持つ後藤さんにその意義と秘訣について伺いました。
具体的な業務
山形市役所に務めています。
現在は企画調整課の交通企画係長として鉄道、バス、飛行機など山形市民が関わる公共交通に関する政策担当を務めています。
簡単に言えば「市民の利便性向上に向け公共交通のより良いあり方について考える仕事」です。現在の厳しい財政状況のなかで、公共交通に関して、市民が不自由ない状態となるよう様々な施策を考え実施する役割を担っています。
例えば、バスが走っていない地域住民の移動手段や仙山線の高速化・機能性向上、あるいは山形空港の利用促進等に関する仕事です。
また、以前は行革推進課というところで主に市役所で実施している様々な事務や事業の改善を仕掛けていくような仕事をしていました。
業務改善を組織の中に広めていく仕事ですね。
具体的には、ワークライフバランス(時間外勤務の削減や休暇の取得促進)の推進や職員提案制度などを担当していました。
—そういった施策を考える際はどういったものを参考にされていたんですか?
市民ニーズや他の自治体の事例ですね。
市民目線に立って考えることが、やはり基本です。
—そうなんですね。市民のニーズを聞く際は全体最適を考えることになると思うのですが、その中で苦労することは何でしょうか?
市民のニーズは当然一つではありません。実に多様です。その中で山形市が抱える課題や財政状況などを踏まえながらベターな方法を考えることが難しいです。
もちろん、そのなかで議員さんや様々な利害関係者の考え方も参考にします。当然、その考え方を100%実施するわけではないですが。
—先ほど2つの部署についてお話して頂きましたが、公務員は部署や課の異動が多いと聞きます。その際に大変なことはありますか?
部署により仕事の内容が全く違います。そのため、異動すると制度や法律を一から学ばなければならず大変苦労します。極端な話、観光系から福祉系の部署に異動することは旅行代理店から福祉関係の仕事に転職するような感じなので(笑)
そのため、今まで求められていたことと、次の部署で求められていることが違う、つまり、仕事の目的や取り組み方が全く変わってしまいます。
基本的に3~5年で異動するのですが、その度に担当する仕事に関する法律や制度について勉強する必要がありますし、当然、前担当者からの引継ぎもしっかり行ないます。
ポストが上に行けば行くほどその作業は大変だと思います。責任が問われますので。
ただ、色んな仕事に関われることは楽しいですし、自治体職員の魅力の1つだと思います。
—後藤さんは本職の他にも「東北まちづくりオフサイトミーティング」を運営されていますが、その詳細についてお聞かせください。
「東北を元気にしたい」
そのような想いを持っている人たちが集まった広域的なネットワークで、3人で立ち上げました。現在は14名の運営委員が中心となり企画運営を行っています。
具体的な活動は2,3ヶ月に1度の割合で行っている勉強会や復興支援のイベント開催、メーリス・フェイスブックページの運営などです。
この組織を立ち上げたのは、10年前に仕事でお世話になっていた大学の先生から関西で行われている勉強会に誘われたことがきっかけでした。
その際に山形市役所では味わえない「外の刺激」をすごい受けて。
この勉強会に参加し、やはり井の中の蛙ではいけないと思うようになり、それ以降も、継続的に参加し続けました。
そのような中で、こうした経験を山形市役所の後輩達にも味わって欲しいと思うようになりました。
しかし、関西での勉強会ということもあり、後輩たちに「交通費が高くて大変です」と言われてしまったんです。
それなら山形の近くで「外の刺激に触れられる場・機会」を創れば良いと考え、岩手県北上市の仲間と共に、東北をフィールドにしたネットワークを立ち上げたというわけです。
最初30人で始めた活動が今ではメンバーが850人以上もいるんですよ。
—「東北まちづくりオフサイトミーティング」から得たものは市役所の中でどう活きていますか?
今の時代、様々な情報をネットから収集することができますが、この情報は誰しもが収集できるものです。
しかし、実際には、ネットで手に入れられる情報は限られていて、それ以外の口コミにより収集できる情報こそが重要なんです。
その点で、オフサイトミーティングの場やつながりから得られる生の情報は本当に仕事に生かせるものばかりです。
例えば、総務省から自治体に届いた通知や様々な資料などの表現が抽象的だった時には、ネットである程度調べたあとに、その内容について総務省の知り合いに直接聞いたりしています。
今の仕事に就いた経緯・キッカケ
親が公務員だったこともあって、「公務員になった方が良いのかな」って子供の頃から漠然と思ってはいました。
でも親が仕事で帰りが遅い日もあったので、「公務員は暇だ」とか「仕事が楽だ」というイメージはなかったですね。
—就活の際はどういったことを考えていたんですか?
私が学生の頃はバブル時代の真っただ中で、多くの企業が利益追求ばかりを考えているような感じでした。それに辟易していたんですね(笑)
だから、一企業の利潤追求ではなく、社会全体の公益性に貢献できる公務員がいいなと思って試験の勉強を始めました。
山形市役所企画調整部企画調整課 交通企画係長
1972年生まれ。1994年に山形市役所入庁。納税課、高齢福祉課、体育振興課冬季国体室、企画調整課、都市政策課、行革推進課を経て現職。
2009年6月に岩手県北上市や宮城県栗原市の職員らと共に「東北まちづくりオフサイトミーティング」を発足し、人・組織・地域・いろいろなものを繋ぎ、東北、そして日本を元気にするための活動を実践中。2015年4月からは、月刊ガバナンスにて「『後藤式』知域に飛び出す公務員ライフ」を連載中。